Number ExBACK NUMBER
尹晶煥はなぜ山村をトップ下に……?
“韓国らしからぬ技巧派”の決断とは。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byPhotoraid/AFLO
posted2017/04/27 17:00
ホームゲームで指揮を執る尹監督。開幕直後こそもたついたが、多くのタレントを擁する本来の強さを発揮し始めている。
DFだった山村をトップ下に置くという奇策!
3月18日、リーグ戦のサガン鳥栖戦に1-0で勝利後、山口蛍はこんなことを口にしていた。
「和也くん(山村和也)をトップ下に置いているやりかたが、すごく上手くいっていると思います。攻守での運動量がチームを活性化している」
山村は流通経済大学時代から将来を嘱望され、当時はセンターバックやボランチとして世代別日本代表で活躍し、後にA代表入りまで果たしていた。
プロ入り後、鹿島アントラーズに入団したが、ポジション争いに苦しんだ。出場機会を求め2016年にはセレッソ大阪に完全移籍。今年から仕事を共にする尹晶煥にとっても「守備の位置ではやや不安定」と映った。
尹晶煥はこのタレントを4-2-3-1のトップ下にコンバートした。G大阪戦後、山村は指揮官からこう指示を受けていることを明かした。
「守備のこと、そしてFWとの距離感について話をされることが多い」(4月16日ガンバ大阪戦後に)
高い位置からの守備を期待されての起用。いっぽうで山村はいずれも1-0で勝利したリーグ戦の第4節と第6節で決勝ゴールを挙げるなど、攻撃面でも活躍を見せている。
本当は華やかなサッカーをやりたいのでは?
そういったなかで、ひとつの疑問が頭をよぎる。
尹晶煥は開幕前から「まずは守備」という言葉を口にする。
セレッソ大阪は日本でも有数のタレントを中盤に有するチームではないか。この点では以前に率いた鳥栖とは少々事情が違うはずだ。
柿谷曜一朗、山口蛍、そしてコンディションの問題でまだ先発出場の機会は少ないが清武弘嗣もいる。その中盤の“花形”たるトップ下に元々守備の選手を置くとは。何より、尹晶煥自身が現役時代には「韓国らしくない」とすら言われた希代の柔軟な技術を誇るゲームメーカーだった。
より華やかなサッカーも展開できるのではないか。
そこには、鳥栖時代('06~'14年。選手時代含む)の“教え”、そして本人が「適応に苦しんだ」と話すKリーグでの指揮('15~'16年)、さらに'02年ワールドカップでの強烈な経験などがある。
尹晶煥監督のサッカー観は、これまでどう変遷してきたのか。
そしてこの知将は、新生セレッソをどのように導いていくつもりなのか。
「まずは守備」という戦略を柱に、どこまで順位を上げていけるのか……尹晶煥監督の新たな挑戦から目が離せない。