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尹晶煥はなぜ山村をトップ下に……?
“韓国らしからぬ技巧派”の決断とは。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byPhotoraid/AFLO
posted2017/04/27 17:00
ホームゲームで指揮を執る尹監督。開幕直後こそもたついたが、多くのタレントを擁する本来の強さを発揮し始めている。
「まずはブロックを作る、という守備の形を」
シーズンの出足はとても順調とは言い難かった。
2月25日の開幕戦ジュビロ磐田戦(ホーム)で攻め手がなく0-0で引き分けた後、3月4日、第2節浦和レッズとのアウェーゲームを取材した。
1-3の完敗。
相手DF槙野智章も「今日に関して言えば、相手をしっかりと抑えられた」と口にした。セレッソの選手は全般的に元気がなく、MF山口蛍に「監督のやり方をどれほど実践できていると感じるか」と質問を向けるとこんな返事が返ってきた。
「……まずはブロックを作る、という守備の形をやっていますが……」
尹晶煥自身も監督会見で厳しい言葉を口にした。
「今日は守備でも攻撃でも、ひとつもやりたいことができなかった。守備のところでは、一発で崩されたり、バランスが崩される場面があった。守備では組織的な部分を今まで練習してきたが、上手くできない部分があった。(攻撃に転じても)奪ったボールもすぐに失った。守備の時間帯が長くなり、攻撃も活発にできなかった」
まだJ2の戦いをしていたセレッソだが……。
現役時代に尹晶煥の指導者としての適性を見出した恩師・松本育夫(現日本サッカー後援会理事長)も現場にいた。
この時のセレッソと浦和について「大人と子供ほどの差がある」と見ていた。試合後、尹にこう声をかけた。
「選手はまだまだJ2のような戦い方をしている」
一方で「慣れるのに開幕から5試合くらいかかる」とも予想した。
その予測はピッタリと当たった。
翌3節の北海道コンサドーレ札幌戦(アウェー)こそ1-1のドローでさらに心配を煽ったが、3月15日のルヴァンカップ第1節で横浜F・マリノス相手に2-0の勝利。セレッソのクラブ公式HPに掲載されるタイでのプレシーズンマッチからカウントすると、練習試合を除く公式戦ではピッタリ5試合めでのシーズン初勝利だった。
そこから7試合で先の鹿島戦、ガンバ戦を含め3勝4分けの無敗(リーグ戦、カップ戦含む)で乗り切っている。
いったい何が起きているのか。