2016年の高橋由伸BACK NUMBER
7月反攻。映画『シン・ゴジラ』に、
高橋由伸監督の姿を見た。
posted2016/08/15 11:45
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Hideki Sugiyama
映画『シン・ゴジラ』(総監督・庵野秀明)が大ヒットしている。
いま、「巨大不明生物」が東京湾に姿をあらわしたらどうなるのか。
《最初は、映画のようなことが起きたら、どういう組織が立ち上がるのか? というところから始めました。庵野さんの脚本にもあった官邸連絡室ができて、対策室ができて、対策本部ができる、という流れと条件がまず正しいのか? 3・11の時の記録資料が膨大にあったので読み込みました。(略)庵野さんから“実際ゴジラが出現した時に、どういう法律を緊急に整備しなければならないかも調査しておいてほしい”と。》(監督助手・中川「映画パンフ」)
徹底してゴジラの周辺をリアルに描くことで、ゴジラ自身もファンタジーと現実(リアル)のまんなかにみえてくる。そしてリアリティさに疑いのなくなったゴジラは、これは「何か」の象徴なのだろうと観客にいろいろ想像させるのである。
とにかく引きこまれ、ドキドキワクワクして、考えさせられて、とりあえずすぐ2回目を観に行った。それでようやっと落ち着いた。
誰もが知るお宝コンテンツはアプローチ次第で……。
で、2回目を観ながら映画館のなかで思ったのである。
「もし自分が巨人のオーナーだったら、球団職員全員にこの映画をみせて感想文を書いてもらいたい」と。
お前は一体何を言っているのかと思われるだろうが、聞いてください。
この場合「巨人」でもいいし「阪神」でもいい。老舗プロレス団体でもいい。伝統と歴史を持ち、エンターテイメントを提供する団体の人たちにはとにかく必見だと思ったのだ。
「ゴジラ」のことは大抵の日本人は知っている。歴史と実績がある。でも、もしかしたらここ最近のゴジラは一部の人たちが愛するジャンルだったかもしれない。しかし今回、庵野秀明という異分野の人材に任せてみたら、一気にゴジラはよみがえり、一般世間に届いた。「怪獣」や「特撮」に興味がない人たちも映画館に足を運んでいる。
べつに、球団の社長や監督を異分野の才能に任せろといってるわけじゃない。誰でも知ってるお宝コンテンツを持ってるなら、アプローチの仕方でいつでも世間で再爆発するという良いお手本だと思ったのです、『シン・ゴジラ』は。