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競泳界の“鬼門”自由形リレーで銅。
32歳松田が託した東京での金メダル。
posted2016/08/10 17:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
松田丈志が戻ってくるのを待ちわびるように、萩野公介が水面へ乗り出す。
ゴールした瞬間、萩野とその左に立つ小堀勇気が、高々と両手を突き上げる。小堀の隣に立つの江原騎士はすでに涙を流していた。
7分3秒50。電光掲示板に「3」という数字が表示されたとき、閉じられていた扉が、ついに開いた。
8月9日、4×200m自由形リレーで獲得した銅メダルは、東京五輪以来、実に52年ぶりとなる自由形リレーでのメダルである。長らく閉じられていた扉を開いたのは彼らが培った結束だった。
萩野、江原、小堀、松田それぞれが見せた果敢な泳ぎ。
レースでは、日本の選手たちの果敢な泳ぎが際立った。
予選を5位で通過して迎えた決勝。第1泳者は萩野が務めた。
「気持ちを切り替えて、しっかりいいレースをしていきたいと思います」
200m自由形で7位に終わった直後の言葉どおり、前半からペースをあげると、1分45秒34、200m決勝より0秒56も速いタイムをたたき出し、2位で江原に引き継ぐ。
江原も持ち味である前半からの積極性をそのままに発揮し、3位で小堀につなぐと、小堀は1つ順位を上げて最終泳者の松田が2位でプールに飛び込んだ。
松田も、前半から惜しみなく飛ばす。終盤こそイギリスにかわされたが、3位でフィニッシュしてメダルを勝ち取った。
4×200mリレーは、今春の日本選手権で代表4名が決まったときからメダルの期待を集めてきた。4人のタイムを合計すると、ロンドン五輪、昨年の世界選手権でのメダル圏内に相当したからだ。
だが実際には、メダルへの道はたやすくはなかった。各国のレベルが上がったことで、日本もこれまで以上にレベルアップしなければいけないことが見えてきたからだ。
そのための試みが、複数の個人種目を泳ぐ萩野以外の松田、小堀、江原の3人が一緒にトレーニングすることだった。