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死球にブチギレ…理論派・藤川球児の“怒り”は「演技」か「本心」か? 番記者が見た“阪神タイガース首位”の要因「選手を競争させない」「ミスに厳しい」
posted2025/04/29 11:04

4月20日広島戦、頭部へデッドボールを契機に睨みをきかせた藤川球児監督(44歳)。当事者である坂本誠志郎(右)が止めに入った
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倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko
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KYODO
演技か。本心か。
4月20日広島戦で、阪神の藤川球児監督がベンチを飛び出した。広島のルーキー、岡本駿のすっぽ抜けた変化球が坂本誠志郎の頭部に直撃した。この死球に怒ったのだ。
普段は、説法するお坊さん然とした達観した様子で野球のイロハを論じる理論派が、血相を変えて吠えた。カープベンチに怒鳴り込まんばかりの勢いに、危険球をもらった当の本人の坂本がなだめるという珍しい光景が広がった。それでも収まらない。左手で来い来いのポーズ。口を何やら動かしながら、次に右手でも来い来い。戻りかけて、再び前進。目元のサングラスを外して帽子にかける。両陣営がぞろぞろと出てきたその真ん中で、左手で「ここに当たったぞ」と頭を指した。
1分間の抗議…怒りは本気か芝居か
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収束まで約1分。この間に見せた闘争心むき出しの姿こそ、日本通算243セーブを挙げて厳しい勝負の世界を生き抜いた男の実像かと思わせた。
いや、そうとは限らない。
3月28日の開幕戦では、佐藤輝明の本塁打で大きなガッツポーズをつくった際に、こんな監督ポリシーを言っていた。
「(ガッツポーズは)チームを鼓舞する意味もある。自分が表現するのは、チームに勢いをもたらす部分でもありますから。本音かどうかは別にして」
グラウンドでの一挙手一投足は、パフォーマンス含みだと自ら公言していた。額面通り受け止めてはいけないというのであれば、乱闘寸前のヒートアップは仮の姿なのか。もっとも、本当のところを藤川監督が口にすることはない。坂本への死球があった試合後、報道陣には「投げちゃダメだよってとこですね。それはそれだけ。それは当然です。危ないですからね」と平静だった。
どこまでが本気で、どこまでが芝居なのかは測りかねる。ただ、選手を守ろうとする姿勢は就任以来、首尾一貫している。