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なぜ女子ゴルファーは五輪を目指す?
イ・ボミ、宮里美香らの本当の理由。
posted2016/07/18 11:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Kyodo News
夢と現実の狭間に身を委ねた彼女たちはみな、涙に暮れた。
2016年の全米女子オープンは、間近に迫った8月のオリンピック各国代表の座を争う最後の一戦になった。大会終了後の世界ランキングをもとにした五輪ランキングで決まる、リオデジャネイロ行き切符の獲得選手。野村敏京に次ぐ日本女子代表の2番手争いは熾烈さを極めるものだった。
僅差で3番手からの逆転を狙った宮里美香、4番手にいた渡邉彩香の願いは叶わず、夢破れて啜り泣いた。最終的には逃げ切りで出場権を手にした大山志保も、2日目に予選落ちを喫した時点で目を潤ませてコースを去った。
韓国代表入りを逃したイ・ボミもまた、自失した表情。甘い笑顔は厳しい現実に奪い去られていた。
リオデジャネイロで112年ぶりに復活するゴルフのオリンピアンを巡る争いは、男子のトッププレーヤーに辞退者が続出するという、他競技から見れば意外なものでもあった。米ツアーとの過密日程やブラジルで蔓延するジカ熱を懸念した選手たちが、出場を次々と取りやめた。世界ランク上位10人のうち6人が不在という事態に陥った。
ランキング1位のジェイソン・デイらは将来の家族像について言及し、ジカウイルスの影響を欠場理由とした。そして日本のエースとして期待された松山英樹も、自ら身を引いた。ジカ熱、現地の治安、自身の虫へのアレルギー反応への不安が最後まで拭えなかった。オリンピックに関心がなかったわけではない。ただ、彼らにとってはメダル争いの魅力よりも、現地でのリスクへの不安の方が大きかった。
アメリカ人記者が言っていた。「リオでなく(開催地争いで敗れた)シカゴなら何の問題もなかったのに」。そんな皮肉も、衛生環境に不安がある屋外で実施される競技であれば的外れでもない。
では、なぜ女子選手は辞退者がほとんどいないのか。
とはいえ、ひとつ疑問がある。
ではなぜ、女子選手には辞退者がほとんどいないのか。現段階で欠場を表明したのは、ジカ熱を心配したリーアン・ペースという南アフリカの選手ひとりだけ。
蚊が媒介するジカウイルスの感染症は、妊婦がかかると産まれてくる子どもが小頭症を発症する恐れがあり、女性への影響のほうがより直接的でありそうなものにも関わらず、である。男女間におけるこの心情の違いを生むものは何なのか。