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なぜ女子ゴルファーは五輪を目指す?
イ・ボミ、宮里美香らの本当の理由。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byKyodo News
posted2016/07/18 11:00
イ・ボミは「今が私の人生で一番調子がいい」と語った。まだ女子アスリートには見えない壁があるのだ。
イ・ボミ「私は……今回が最後だと思います」
「オリンピックに出ない男子プロの気持ちも分かります。ジカウイルスも心配だし、テロもあるかもしれない」
リオへの道が絶たれる数日前、全米女子オープンの会場でそう話したのはイ・ボミだった。同じプロゴルファーとして、それぞれに優先すべきものがあることに理解を示し、彼らの判断を尊重した。
けれど彼女自身の思いは違う。リスクを背負ってでもリオに行きたかった。その心情は次のようなものだった。
「私は……今回が最後だと思います。オリンピックに出るチャンスは」
女子プロゴルファーのキャリアは、男子とは少々異なる。選手生命だけでなく、プレーヤーとしてトップフォームにあるピークが比較的若く、短い。
「(2020年の)東京まで頑張れたらもちろんいいと思うんですけど、いまが私の人生で一番調子がいいのかなと思うから。この年が“最後”かなって」
リオでの機会を逃せば、もう五輪には縁がないかもしれない。そう考えるのはなにも、首痛から復帰するため、この大一番を前に4軒もの治療院の門を叩いた39歳の大山だけではないのである。
既婚者や子持ちの女子選手はまだまだ少ない。
8月で28歳になるイ・ボミは「(ジカウイルス感染症は)妊娠したら問題が大きい。でも、結婚したり子どもがいたりしない選手が多いでしょう。心配が男子に比べて少ないと思うんです」とも分析した。
配偶者や子どもを持ちながら、レギュラーツアーで活躍する女子ゴルファーは確かにいるが、男子に比べれば少数派である。ママさんプロは増加傾向にあるとはいえ「結婚して、子どもが生まれるまで精一杯、現役生活を」とキャリアをイメージする若手の女子選手は多い。なにもそれはゴルフに限ったことでもないだろう。
選手生命、ピークの短さから言えば、女子選手の「いま」にかける情熱はより濃縮されているのかもしれない。