ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
なぜ女子ゴルファーは五輪を目指す?
イ・ボミ、宮里美香らの本当の理由。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byKyodo News
posted2016/07/18 11:00
イ・ボミは「今が私の人生で一番調子がいい」と語った。まだ女子アスリートには見えない壁があるのだ。
女子ゴルフはアメリカでは“マイナー”?
キャリアの期間の問題に加えて、宮里美香が指摘したことがある。それは米国における男女ツアーの境遇の違いを発端にするものだ。
2008年末にプロ転向してから一途に米国で戦ってきた彼女だからこそ、肌で感じ続けてきたものがある。
「アメリカのスポーツって、男子がすごいじゃないですか。やっぱり女子のスポーツって“メジャー”じゃないんですよ」
最盛期とまで表現される現在の日本の女子ツアーからすると想像すらし難いが、アメリカ国内で行われる米女子ツアーの現場は、男子に比べ格段に閑散としている。
賞金でいえば、今年の全米オープンにおいて、優勝者が手にした額は男子が180万ドルに対し女子は81万ドルと大きな開きがある。さらに、会場全体を包む観衆、規模の差はその何倍もあるのが現状だ。
同一会場開催で感じた、圧倒的な男女の格差。
宮里は毎年のマスターズをはじめ、男子のツアートーナメントに足を運ぶ機会も多い。そのたびに圧倒され、「やっぱり女子とは違うよ……マスターズも『こんなに人が入るんだなぁ』って。最近は女子の人気も上がってきているとは言うけれど……」と痛感する。
2年前、全米オープンはノースカロライナ州のパインハーストNO.2コースを舞台に、史上初めて男女が同一会場で開催された。男子が先に試合を行い、その翌週に女子大会を実施。今回のオリンピックのシミュレーションという面でも注目されていた。
男子大会を終えた翌日の月曜日、会場の作業員たちの仕事は、場内設備の「縮小」だった。女子選手たちが練習に勤しむ間、18番グリーン脇の大観客席の一部を撤収する作業が進められていた。
「スタンドが半分以下になったもんね……あれを見ると、残念な気持ちになったけれど、これが現実なんだなって」と宮里。そんな“格差”を知るからこそ、米ツアーで戦う女子プロの鼻息は荒いという。
「アメリカの女子ゴルフ全体がどうやったら人気が出るか、みんなが考えている。自分の中では全米女子オープンが最高の試合。これよりも上のものを作るって、すごい時間がかかると思う。でも、オリンピックがその転機になるかもしれないと聞いて『確かにそうだなぁ』って思ったんです」