フットボール“新語録”BACK NUMBER
世界を駆けるFIFAコンサルタント。
杉原海太の言葉でJの制度を考える。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byShinya Kizaki
posted2016/06/01 10:30
FIFAコンサルタントは、世界に10人前後しかいない。日本人はもちろん杉原海太1人だ。
Jリーグの制度は本当に日本にあっているか。
杉原は制度のエキスパートとして、こう結論付けた。
「国ごとに、置かれたサッカー界の状況も経済状況含めた国の状況も違うので、制度の導入はコピペではうまくいかない。サッカーのレベルが向上し盛り上がるという目的は同じでも、そこまでの道のりにおいての優先課題は国によって異なるからです」
ここでの杉原の話は、あくまで海外の様々な国が対象だ。だが、話を聞いていてふと思った。もしかしたらJリーグのクラブライセンス制度は、ドイツを参考にしすぎて日本に合ってない部分があるのではないか、と。
Jリーグは2013年から、クラブライセンス制度を実施している。まずUEFAがCL出場資格として導入し、FIFAも採用し、AFCも続いた。その結果、ACLに出るためにJリーグにもライセンス制度が必要になった。
Jリーグが定めた制度には「財務担当・運営担当・セキュリティ担当・広報担当・マーケティング担当を置く」、「年間を通じて使用できる練習場とクラブハウスを持つ」といった多数の要件がある。
日本独自の「3期連続赤字ではない」というルール。
その中で最もクラブ経営に影響を及ぼしたのは、「債務超過でないこと」、「3期連続赤字でないこと」という日本独自のルールだった。もし満たされなければ、ライセンスが発行されない、という厳しいものである。
この制度によって、各地でスタジアムやクラブハウスの新設・改修が進み、財務への意識が高まった。監視の強化によって、2009年の大分トリニータ、2010年の東京ヴェルディのような経営危機は起こっていない。破綻を防ぐ仕組みが確立されつつある。
Jリーグの資料によれば、J1・J2の営業収益は2011年度・728億円、2012年度・773億円、2013年度・793億円、2014年度・838億円と「緩やかな拡大均衡で推移している」。鞭という点では、担当者の頑張りを評価すべきだろう。筆者も担当者へのインタビューを通して、細かなルールを全クラブに徹底する大変さを痛感した。