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バレーの新システムはなぜ“今”か?
タブレットとチャレンジの問題点。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2016/05/25 11:00
試合の流れを切る、などの戦術的にも使えるチャレンジだが、現状はまだまだ粗いシステムと言わざるを得ない。
会場の観客は、中断の理由がわからずほったらかし。
後日行われたFIVB(国際バレーボール連盟)の記者会見によると、レッドカードに至った経緯はこうだ。
「(8-12の時の)チャレンジは、日本選手がセンターラインを越えたことに対するものだったが、越えたのは足ではなく手で、ルール違反ではないため適用されず、タイムアウトのコールが遅かったので、遅延行為でイエローカードが出た。それについてタイの監督がコーチングゾーンを離れて副審に正しくないマナーで接したので、敵対的行為と捉え、既にイエローカードが出ていたのでレッドカードが出された。
2枚目の時(13-12)は(選手交代の要求が通っていないのに交代しようとしたので)遅延行為で、レッドカードが適用された」
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これを聞くと一応判定の理由は理解できるが、タイからの選手交代の要求が審判に伝わらなかった理由はわからない。
そもそもあの試合は、会場で見ている限り、なぜ中断しているのか、何に対するイエローカード、レッドカードなのかわからなかった。何度も試合が中断したにもかかわらず、会場内では何の説明もなく、観客はほったらかしである。
ラリーをぶった切るチャレンジ制度への違和感。
今大会からのルール変更は大きく分けて2つあった。一つはチャレンジシステムについてのものだ。
2014年から導入されたチャレンジシステムは、ボールのイン、アウトやブロックタッチなどについて、審判の判定に不服がある場合にビデオ判定を要求できるというもの。
これまではラリー終了後にしかチャレンジができなかったが、今大会からはラリー中にも、反則が疑われるプレーがあればラリーを止めてチャレンジできるようになった。
しかし、バレーボールは流れのスポーツであり、ラリーはバレーの醍醐味の一つだ。白熱したラリーをどちらが制するかによって試合の流れが変わることもある。それなのに、インプレー中にブザーが鳴ってラリーがぶった切られるというのは違和感しかない。
全日本の眞鍋政義監督も「我々はルールの中でやるだけですが、ラリーが止まるのはよくないのかなと思う」と語った。