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バレーの新システムはなぜ“今”か?
タブレットとチャレンジの問題点。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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posted2016/05/25 11:00

バレーの新システムはなぜ“今”か?タブレットとチャレンジの問題点。<Number Web> photograph by AFLO

試合の流れを切る、などの戦術的にも使えるチャレンジだが、現状はまだまだ粗いシステムと言わざるを得ない。

5秒以内という厳しいタブレット操作の時間。

 もう一つの変更点は、チャレンジやタイムアウト、選手交代の要求を、従来のハンドシグナルではなく、タブレット端末で行わなければならなくなったこと。これが今回多くの問題を生んだ。

 大会最終日に、報道陣に実際のタブレットが公開されたのだが、例えばチャレンジを要求する場合、「CHALLENGE」ボタンを押すと、次の画面に「BALL IN-OUT」「BLOCK TOUCH」など7項目が表示され、5秒以内に項目を選ばなければならない。

 選手交代の場合は、交代させたい選手の番号を押し、送信するのだが、紛らわしい場所にキャンセルボタンがあるなど、操作ミスが起きる可能性はありそうだ。うっかり誤った操作をすると画面からボタンが消えてしまうこともある。

 どのチームもコーチがタブレットを操作しているが、5秒以内など時間的制限のプレッシャーがある中、操作に慣れていないコーチは焦るだろうと想像できる。

 ベンチのタブレットから要求を送信すると、スコアラーのパソコン画面に表示され、スコアラーが「Accept」ボタンを押して初めて要求が受理される。そのタイムラグもベンチを混乱させる一因となっている。

タイの監督は、普段は仏のような穏やかな人物。

 あの日本対タイ戦だけを見ると、「タイの監督はなんて気性の荒い監督だ」と思われるかもしれない。しかし本来キャテポン監督は、タイが“微笑みの国”と呼ばれるのも納得の、非常に穏やかで礼儀正しい人物だ。選手たちにも尊敬と愛情を持って接し、まるで仏様のようなイメージである。

 今大会は初日から、試合中にタブレットでうまく要求が伝わらないことがあり、FIVBに改善の要望を出していたという。しかし何の変化もないまま日々イライラが募り、4日目、ランキング上位の日本にあと一歩で勝てる、五輪出場が近づくかどうか、という場面で、感情を抑えきれなくなったのではないか。

 五輪出場をかけた日本対イタリア戦でも、イタリアの選手交代が認められない場面があったが、百戦錬磨のマルコ・ボニッタ監督は慌てず騒がず、冷静に指揮を執り続けた。指揮官とは本来こうあるべきなのだろう。しかしだからといって、「キャテポン監督には冷静さが足りなかった」だけで片付けていいのだろうか。

【次ページ】 FIVBの事務局長は、改善の必要はないと断言。

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