熱血指揮官の「湘南、かく戦えり」BACK NUMBER

苦闘する湘南・曹貴裁監督の日記より。
「それでも全員で電車を進めていく」

posted2016/04/06 12:30

 
苦闘する湘南・曹貴裁監督の日記より。「それでも全員で電車を進めていく」<Number Web> photograph by Shonan Bellmare

チームとしての戦い方は良かったが、試合は紙一重で敗北に。曹監督「すごくもったいない試合だった」。

text by

曹貴裁

曹貴裁Cho Kwi-Jae

PROFILE

photograph by

Shonan Bellmare

 Jリーグの監督は、目の前の試合に対してどんな準備をし、結果をどう受け止め、そしてどんな思いで次の試合に向かうのか……。
 本連載では、湘南ベルマーレを率いる曹貴裁監督が、試合に臨むまでの過程を記した前週の日記と実際の試合結果を受けての胸中を同時に紹介。
 悩み、考え、決断する監督のリアルな声を毎週お届けします!
 今週は、リーグ戦今季初勝利を目指した神戸戦への想いが綴られています。

*本連載ではチョウ・キジェ監督の氏名表記方法につきまして、湘南ベルマーレとの協議により「曹貴裁」と統一いたします。

<第5節・神戸戦前週の監督日記>

●3月30日(水)

 先週はリーグ戦が一時中断し、ナビスコカップを戦う1週間だった。リーグ戦4試合で1度も勝てていないという現状にネガティブに向き合ってしまっては、ナビスコカップという趣の違う大会においてもそれを引きずるムードが出るし、いいことはひとつもない。ブレずに前向きに、次の試合に向かっていくメニューを選手たちと取り組んだ。

 ナビスコカップでの名古屋との試合を終えて何より良かったのは、やはり勝点3を取れたこと(1-0で勝利)。この試合は自分たちの戦術を構築する以前の、選手が個人としてやらなければならない最低限のレベル、そのネジが1mmでもずれたら相手のカウンターや高さに沈んでしまう典型的な流れの試合でもあった。虎の子の1点を守りきるような試合になったとはいえ、アウェーで勝点3を取れたことで、チームとしてもう一度自分たちの足元を見つめ向き合ったことに対する成果が出たという点で選手が自信を持ち直したというところもあるが、自分たちがこの原点を忘れてはいけないんだと再認識できたことがやはり大きい。

 3月はナビスコ含め1度しか勝てなかったけれども、我々が進んでいく道に対し、この道を引き返そうとか、横にずれて先回りしようとか、もっといい世界があると言って車を乗り換えようとか、そういう風に考える選手は一人もいなかったように感じる。だから指揮官として、これから進んでいく道に対し、雨が降ろうが槍が降ろうが視界を遮られようが、エンジンを全開にして前進していく必要がある。4月は7試合の中でホームゲームが5試合あるので、アウェーからも含めたくさん来てもらうお客さんに、1mmもずれない前進力でこの4月7試合の攻勢を観てもらいたい。4月は総合力が勝負となる。

●3月31日(木)

 今週から我々のアカデミーの選手が3名練習参加をしている。これまで約10年弱、僕も育成アカデミーの仕事に携わらせてもらってきたが、そこでの様々な経験が今のトップの監督をやる上でとても活かされているのは間違いない事実だ。今でも時折アカデミーの選手を指導する機会に恵まれるが、その度に彼らが短時間で大きな成長をし、その姿にいつもエネルギーをもらって帰路についたことを思い出す。だからこの連戦が続くなかでも彼らが練習参加することを断る理由はなかった。

【次ページ】 アカデミーの選手がトップチームで練習する意味とは?

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