熱血指揮官の「湘南、かく戦えり」BACK NUMBER
苦闘する湘南・曹貴裁監督の日記より。
「それでも全員で電車を進めていく」
text by
曹貴裁Cho Kwi-Jae
photograph byShonan Bellmare
posted2016/04/06 12:30
チームとしての戦い方は良かったが、試合は紙一重で敗北に。曹監督「すごくもったいない試合だった」。
アカデミーの選手がトップチームで練習する意味とは?
トップの選手にとってアカデミーの選手が来るということは人数が増えることでプレー機会が限られ、アピールする回数が減るというデメリットもある。そういう見方もあるなかで何の疑問もなく彼らを受け入れ、アドバイスが出来る選手たちに改めて感謝しなければならないと思う。
今回の練習参加では彼らをトップの選手と同じ基準で見ようと決めていた。その中で昨日、今日の練習で彼らを厳しく叱責する場面が何度かあった。それは技術やフィジカル、戦術面が不足しているからということでなく、乗り込んでくる姿勢の部分。高校3年生の春休み、言わばトップチームに上がれるかどうかの1週間をどう過ごすかで言うと、明らかにトップチームの選手が次の試合に出ようとしているモチベーションにのまれている場面が散見された。ミスを気にしてボールを受けたがらない、逆にミスをしてトップの選手から強く言われると次のプレーが変化してしまう。当たり前だけどそんなことではプロの世界では生きていけない。
チームだけでなくフロントにも直接意見している。
こういう状況を経て彼らが学ばなければいけないのは、彼ら自身が、自分の将来のためにそういった状況で何ができるのかということを、やらされるのではなく、楽しみながらやるということだ。選手にとって毎日見られているということはモチベーションにもなる一方、非常に厳しく気の抜けない緊張感のある空間で過ごすという、想像を絶する大変なところもある。それを楽しめるかどうか、自分の意思で貫けるかどうかが、最終的にはプロ選手としての価値を決めるんじゃないかなと思っている。
そういう意味では会社側、フロント側の姿勢も同じ。フロントと現場が同じ建物の中、上下に事務所があるという距離感もあり、何か感じたら鬱陶しいと思われることも直接言うようにしている。そういう部分で今朝、ある物事で詰めが甘いように感じ、プロとしての姿勢を問いただした場面があった。取り留めのないことだったかもしれないが、これからの7連戦を戦う上で「このくらいでいいや」というものは必ず結果に跳ね返ってくる。僕は監督として、フロントの仕事が現場に全然関係ないとは思っていなくて、それぞれが仲間がうまくいくように言われる前に行動する姿勢がとても大事だと思っている。ただこうして指摘をしていく中で、相手に対し攻撃性を持っていくだけではお互いの関係にヒビが入るだけなので、そのことを通じて自分にもしっかり矢印を向け客観性を持ち、その中で良いものが作れるように努力していきたい。