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<成り上がり伝説の最終章>
因縁の相手と3度目の決着戦。
パッキャオは有終の美を飾れるか。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byGetty Images

posted2016/03/31 11:00

<成り上がり伝説の最終章>因縁の相手と3度目の決着戦。パッキャオは有終の美を飾れるか。<Number Web> photograph by Getty Images

真っ向勝負を宣言したブラッドリー。

 現時点でこのマッチメークは「新鮮味がない」と言われ、評判は芳しくない。確かに過去の2戦はさほどエキサイティングな内容ではなかった。ただし、今回がこれまでと同じような展開を描くと見るのは早計ではないだろうか。

 ブラッドリーは35戦して負けたのはいまだパッキャオとの一戦だけ。何よりこの試合にかける意気込みは相当なものだ。もしパッキャオに完勝すれば(KOなら理想的だ)、ポスト・パッキャオの優位なポジションに立てるだろう。メイウェザーが昨年引退し、次代のスターの座をめぐる争いが過熱する中、ブラッドリーはかつてマイク・タイソンらトップ選手を手掛けたトレーナー、テディ・アトラスとタッグを組んで生まれ変わろうとしている。守備的との批判を受けがちだったブラッドリーは記者会見で「4月9日はみんなが望むような戦いをする」と真っ向勝負を強調した。

この試合は一つの時代の大きな区切りとなる。

 昨年5月のメイウェザー戦後に右肩を手術したパッキャオは、けがの回復具合が復調のカギを握るが、本人が「いつものようにノックアウトを狙っていく」と語るように、いずれにしてもアグレッシブに攻めていくはずだ。有終の美を飾るべくモチベーションが高まっているパッキャオと、千載一遇のチャンスを生かしたいブラッドリー。両者のハートが火花を散らせば、どちらが勝利するにせよ、スペクタクルな結末は十分期待できると言えるだろう。

 昔からボクサーの引退宣言は信用ならないとされ、パッキャオの引退宣言にも懐疑的な見方は尽きない。それでも今回の試合が一つの時代の大きな区切りとなることは間違いない。米国で最も大きな成功を手にしたアジア人アスリートの最後をしかと見届けたい。

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マニー・パッキャオ
ティモシー・ブラッドリー

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