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<成り上がり伝説の最終章>
因縁の相手と3度目の決着戦。
パッキャオは有終の美を飾れるか。
posted2016/03/31 11:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Getty Images
フィリピンの貧しい家庭からアメリカンドリームを実現したマニー・パッキャオが、グローブを吊るす日が近づいてきた。パッキャオは4月9日(日本時間10日)、米ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで前WBO世界ウェルター級王者のティモシー・ブラッドリーと対戦する。パッキャオはこの試合を最後に現役を退くと公言しているのだ。
この10年間、パッキャオほど我々ボクシングファンを熱くさせたボクサーはいなかった。フライ級から9階級上のスーパーウェルター級まで駆け上がり、うち6階級を制した。数字上の偉業はもとより、常にアグレッシブでダイナミックなファイトスタイルが、世界中のファンのハートをつかんだ。それは鉄壁の防御を武器に無敗のまま昨年引退した同時代のスター、フロイド・メイウェザーとは対照的だった。
これまで1勝1敗、今回は決着戦に。
現役を望む声がまだまだあるとはいえ、このタイミングで引退という選択は説得力を持つ。まずは37歳という年齢だ。パッキャオが肉体的にピークを過ぎつつあるのは誰もが認めるところであろう。昨年5月には、念願のメイウェザー戦が実現し、敗れはしたものの1億5000万ドル(約180億円)を稼いだとも言われる。これ以上のビッグファイトはこの先望めそうにない。2010年には母国フィリピンの下院議員に当選した。今年5月には上院議員選挙に出馬する予定で、政治活動に気持ちが傾いているのも理由の一つだ。
対戦相手のブラッドリーとは既に拳を2度交え、'12年6月の第1戦は、ブラッドリーが2-1判定勝ち。しかし、パッキャオの勝利を支持する声が多く、物議を醸す判定となった。'14年4月の第2戦は、パッキャオが文句なしの3-0判定勝ちでリベンジをはたす。今回はラバーマッチ、決着戦という位置づけだ。