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日本人ライダー全盛時代は今いずこ。
ロッシが語った「日本の強み」とは?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/08/31 10:30
昨年、今年と日本人が表彰台に立てないレースが続くなか、日本のエースとして中上貴晶の活躍に大きな注目が集まっている。
ベテラン達が国内レースで上位にいる、という現実。
現在、グランプリに参戦している日本人選手たちは、そういった環境の中から育ってきた選手である。
中上と尾野は、かろうじて若手の育成を続けているホンダが育ててきた選手であり、鈴木はレベルの低い日本のレース界を飛び越えての世界挑戦だ。
1990年代から2000年代にかけて世界で活躍した日本人選手が海外に出て学ぶことは、初めて経験するサーキットの攻略だけだった。
いまの日本人選手は、海外に出てライダースキルを磨くところから始めなければならず、そのレベルは僕がグランプリを転戦した26年間のなかで、おそらく最低のレベルだろうと思う。
それは、'90年代や2000年代にグランプリを経験したベテランの選手たちが、いまでも国内のレースの中心にいるという現実が何よりも物語っている。
それにしても、こういうテーマを論ずるといろんなことがリンクしていくので、とても書ききれない。
ただ、国内のレース界の空洞化が進んだ'90年代、そしてアマチュア化が進んだ2000年代に、こういう時代が来ることは予想できたし、その通りの時代が訪れているだけのことだと言ってもいい。
ロッシが語った、日本復活の方策とは。
それではどうしたら良いのだろうということになるのだが、そんな疑問に対して、いみじくも、全盛時代の日本人選手と戦ってきたロッシがこう語ってくれた。
「日本には、素晴らしいライダーを誕生させるシステムがあった。ヨーロッパと日本は違うし、そういったことに誇りをもってもいいと思う」
世界で活躍してきた日本の選手たちは、昔もいまも日本のバイクメーカーがワークスライダーとして育て、もしくはサポートしてきたライダーたちがほとんどである。
レースが文化として根付いているヨーロッパとは違い、日本人が世界で通用するためには、バイクメーカーのサポートが不可欠だということをロッシは言いあてている。
日本のレース界の舵取りをしてきたMFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)は、「全日本ロードには夢がない。全日本チャンピオンになって、何があるんですか……」というライダーたちの言葉を真摯に受け止めなくてはいけない。
そんな言葉は獲ってから言えと言いたいが、そう言いたくなるのもわからないではない、というのが日本のレース界の現状である。
必要なのは、まず国内のワークスチームの復活。そして世界に通用するカテゴリーとルール作り。
日本のレース界の再生のため、そしてグランプリでの日本人ライダー復権のための急務である。