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日本酒の魅力をミラノから世界へ。
中田英寿のプロジェクトを支えた人々。
posted2015/07/17 10:40
text by
川上康介Kosuke Kawakami
photograph by
Kosuke Kawakami
シリーズ最終回の今回は、このイベントを支えた日本全国の蔵元や陶芸家、漆芸作家と「日本の塗師」プロジェクト研修生たちの声をお届けする。
中田英寿は、これまで世界に日本酒を広める活動を何度も行ってきた。そのたびに驚かされるのは、彼の活動に賛同して、参加する“仲間”が多いことだ。
今回、全国の蔵元からは計28人がミラノにやってきた。彼らは、シフトを組んでSAKENOMYのカウンターに立ち、スタッフとして接客しながら日本酒のPRを行う。観光する時間はほとんどない。
「僕らは酒を作ることはしますが、直接お客さんと接する機会は少ない。海外のお客さんならなおさらです。でもこういうチャンスがあると、直接話を聞けて勉強になることが多い。中田さんや他の蔵元の方などと話しながら、刺激を受けることもすごくあるので、できるだけ参加するようにしています」(参加した蔵元のひとり)
世界中の人たちに、日本の“器”文化を知って欲しい。
今回、中田が掲げたテーマのひとつが“器”。
オリジナルの酒器を製作した美濃焼の陶芸家・林恭助さんは、サンパウロに引き続き参戦。またSAKENOMYで「飲みやすい、美味しい」と大評判だった漆の酒器の製作に携わったのは、人間国宝の漆芸作家・室瀬和美さんだ。オープニングレセプションには、凛とした和服姿で参加し、ゲストたちの注目の的になった。
「あんなにたくさんの人が集まると思っていませんでした(笑)。海外の方でも漆の器の口当たりのよさを理解してもらえて嬉しかったですね。こういうところから日本文化の素晴らしさが伝わっていけばいいと思います」
実は、この漆の酒器を製作したのは、人材派遣会社の日研総業が行っている「日本の塗師」プロジェクトに参加した5人の研修生たちだ。
厳しい審査を経て選抜された20~30代のモノづくりに興味のある若者たちが室瀬さんのもとで学び、作り上げた器がミラノで使われたのだ。