岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER

企業頼みは限界、プロ化は茨の道。
日本ラグビーを覆うジレンマを解け! 

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岩渕健輔

岩渕健輔Kensuke Iwabuchi

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posted2015/04/21 11:10

企業頼みは限界、プロ化は茨の道。日本ラグビーを覆うジレンマを解け!<Number Web> photograph by AFLO

日本代表はアジアでは圧倒的な強さを誇り、W杯への予選はほぼ通過することが期待されるポジションにいる。その座に留まるか世界を目指すか、今が分かれ道なのだ。

「プロ化」は全てを解決する魔法の杖か。

 かくして浮上してきたのが、「トップリーグをプロ化してはどうか」という議論です。

 事実、ヨーロッパなどの例を見ても、プロ化は代表を強化する上での起爆剤になってきました。プロ化をすれば競技のレベルが目に見えて上がるだけでなく、選手や指導者の意識も変わるからです。

 プロの場合は何をおいても結果を出すことが最優先されますし、成績の低下は待遇や練習環境にダイレクトに跳ね返ってきます。私が所属していたイングランドのサラセンズでも、サッカー界におけるチャンピオンズリーグのような、ハイネケンカップという大会に出場できなくなった際には、フィジオセラピストや用具係のスタッフが姿を消したり、チームメイトが突然解雇されることも起きました。

 私自身、自分が出そうとしている1本のパス、試合中の1プレーに、今後の生活や選手としてのキャリアがかかっていると思い知らされる場面は、幾度となく体験しました。

 またリーグ戦をプロ化して単独で採算が取れるようにすれば、企業に依存した運営の在り方からも脱却することが期待できます。試合のレベルアップを図りつつ、選手や指導者の意識を変え、企業の負担も軽減していく。トップリーグをプロ化するのは、様々な問題を解決していく上で、最も即効性のある選択肢のようにも映る所以です。

現在の観客動員数や知名度では、早晩行き詰まる。

 ところが、話はそれほど簡単でもありません。現時点でプロ化に踏み切ったとして、国内のリーグ戦を継続していける保証はないからです。むしろ観客動員数と競技の認知度、入場料収入や放映権料などが十分とは言えない状況を考えれば、早晩、運営が行き詰まるとみていいでしょう。

 これはプロ野球やJリーグなどの例を見ればよくわかります。プロ野球は国民的なスポーツとして定着していますが、毎回スタジアムを満員にできるチームは一部に限られています。Jリーグもしかり。J1のクラブの中にさえも活動資金の捻出に苦しんでいるクラブがありますし、J2やJ3ともなってくると、経営赤字に陥らないようにするだけで精一杯のところが少なくないと言われています。

 プロ野球やJリーグでさえこうなのですから、後先を考えずにラグビーがプロ化したりすれば、さらなる窮地に追い込まれるのは火を見るよりも明らかです。

【次ページ】 日本ラグビーが直面する3つのジレンマ。

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岩渕健輔

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