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JリーグのFFP制度には特殊事情が?
親会社、観客数、そして北九州。
posted2015/01/03 10:40
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
7億円
(ギラヴァンツ北九州の予算規模)
前編で、欧州においてどのような経緯と目的でクラブライセンス制度ならびにファイナンシャル・フェアプレー制度(FFP)が導入されてきたかをご説明しました。後編では、Jリーグに目を向けてみたいと思います。
2012年に導入されたJリーグのクラブライセンス制度は、アジアサッカー連盟(AFC)の基準に則り、「競技」「施設」「人事・組織」「法務」「財務」の5分野で、合計56の審査基準項目を設けています。これらを満たさないと、Jリーグに参加する資格(ライセンス)を失うというのがペナルティです。
今回は、5分野のうち「財務」と「施設」の2つに注目します。
まず財務基準は、「3期連続赤字」または「債務超過」に陥らないことを必須の条件としています。これはUEFAのFFP同様、身の丈経営を促すものと考えれば、たしかに納得感があります。
しかし当然ながら、日本のクラブが置かれている状況は欧州のクラブとは必ずしも同じではありません。欧州のFFPは、過度な補強を戒める意味合いが強くありましたが、Jリーグでは財務基盤の弱いクラブが経営危機に陥ることを未然に防ぐ役割の方が大きいと言えるでしょう。
Jクラブのほとんどに存在する「親会社」。
ただし、Jリーグのクラブは多くの場合、親会社(責任企業)が存在しています。クラブ単体で赤字となれば、親会社が広告宣伝費としてその赤字を補填することが習慣的に行なわれるという特殊な事情があるのです。
そうした状況下で、クラブライセンス制度の財務基準に妥当性があると言えるのでしょうか。
たとえばヴィッセル神戸は、上記の財務基準に抵触する経営状況にありながら、実質的なオーナーだった三木谷浩史氏による損失補填を受けて条件を難なくクリアしました。来季のライセンス交付審査においては、東京V、鳥取、福岡、長崎の4クラブがクラブ運営上の是正通達を受けただけで、この財務規準の存在意義は見えづらいと言わざるを得ません。