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JリーグのFFP制度には特殊事情が?
親会社、観客数、そして北九州。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/01/03 10:40
北九州市立本城陸上競技場につめかけたギラヴァンツのサポーターたち。近年最も入場者数が多かったのが、2013年にガンバ大阪を迎えた試合での7207人だ。
徳島でさえ、12億円~15億円の予算があった。
しかし他クラブの現実を見ると、そう甘くはありません。2014年、サイクル1を迎えた徳島ヴォルティスはJ1最下位に沈みましたが、その徳島でさえ2013年度の予算規模は約12億円(J2所属時の数値なので、2014年は推計約15億円)。サイクル3にあるヴァンフォーレ甲府も約15億円の予算規模があります。またサイクル1のままJ1上位に食い込み、理想を体現しているサガン鳥栖は約17億円です。
こうしたことから単純に予算規模で考えると、現状7億円の北九州がJ1に昇格したとしても、苦しい戦いを強いられる可能性が高いと言えるかもしれません。もちろん、仮に1シーズンで降格してしまった場合でも、J1のレベルを体感することで選手もフロントも経験値を上げ、次なるサイクル2に向けて大きな収穫を得られるというメリットはあるでしょう。
考えるべきは、いかに鳥栖の軌跡を辿れるか。
しかし一方で、昇格と降格を繰り返すクラブには「選手の草刈り場」となってしまうデメリットもあります。降格時には、J1でのプレーを希望する主力選手が流出する可能性が高まり、昇格時も、今オフ湘南ベルマーレの永木亮太や遠藤航がビッグクラブからオファーを受けたように、やはり能力の高い選手は補強のターゲットとなるのです。
北九州が今考えるべきは、いかにサガン鳥栖のようにサイクル1の勢いのままJ1に定着できるクラブの態勢を整えられるか、という点ではないでしょうか。予算規模で言うならば、13~14億円のスケールを目指すのです。この悔しさを糧に、J1ライセンスが交付された時には圧倒的な力でJ2を制する実力をつけておくこと。さらに経営努力を重ねて、J1で十分に戦える予算規模を確保すること。現制度のもとでは、不本意ながらも与えられた時間をポジティブな姿勢で活用していくしかありません。