フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
挑戦を続ける五輪王者・羽生結弦。
世界フィギュア史でも異色の理由。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAP/AFLO
posted2014/12/22 16:30
GPファイナル終了後、すぐに帰国して全日本に向けた練習を始めた羽生。「(全日本選手権まで)短い期間の中、どれだけ自分が成長できるか……そこに重点を置いて練習していきたい」
歴代最高点が期待できる「オペラ座の怪人」。
もちろん、今シーズン最大の挑戦はフリー「オペラ座の怪人」である。
「中学の時から好きな曲で、思い入れが強い」というこの音楽を、元アイスダンス世界チャンピオンのシェイリーン・ボーンが振付けた。
このプログラムは、前代未聞の高度なジャンプ構成ということで注目された。前半に4回転を2回、そして後半で4回転トウループのコンビネーションを組み込むことを予定していたのである。だが中国杯のフリー直前の6分間ウォームアップでの事故のため、まだ当初のジャンプ構成を実現できていない。
バルセロナでは羽生は、「まだ体調は完璧とは言えない。全日本までは、今のままの構成でいきます」とコメントしている。
本来はステップシークエンスが終わって後半へと差し掛かった4つ目のジャンプに、4+3あるいは4+2のトウループを入れる予定なのだという。
フリー後半に4回転を入れる構成は、羽生のトレーニングメイトでGPファイナル2位だったハビエル・フェルナンデスが何度か成功させている。だがジャンプの質などの多くの要素を考えると、おそらく羽生がこの構成で成功させたなら、歴代最高点が出ることはまず間違いないだろう。
五輪チャンピオンの中で羽生が異色の存在である理由。
そんな羽生は、近代の男子五輪金メダリストの中で、かなり異色の存在である。
ざっと過去30年ほどの男子チャンピオンを思い浮かべてみると、これまでの金メダルはトップ男子を引っ張ってきたベテラン選手に、最後の豪華なフィナーレのようにして与えられてきたケースがほとんどだからだ。
バンクーバー五輪で復帰したエフゲニー・プルシェンコは特殊なケースとしても、ほとんどのオリンピックチャンピオンは金メダルを手にした後、プロに転向している。唯一の例外は、1994年リレハンメル五輪で20歳のチャンピオンとなったアレクセイ・ウルマノフだが、怪我などの理由もあってその後は世界の表彰台に戻ることなく現役を終えた。