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W杯決勝の審判はどうやって決まる?
過酷な“査定”と“トーナメント”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/07/08 10:30
2012-2013シーズンにはCL決勝の主審も務めたリッツォーリ。自身最後のW杯で、決勝の笛を吹くことができるだろうか?
2大会続けて同じ大陸から決勝の主審は出ていない。
どんなに優秀な審判であっても、W杯の“ファイナル・レフェリー”となるためには、運も必要だ。
近年のW杯では、2大会続けて同じ大陸から決勝戦の審判が指名された前例がない。決勝主審の出身国を、日本が初出場したフランス大会から振り返ってみても、'98年=モロッコ(アフリカ)、'02年=イタリア(欧州)、'06年=アルゼンチン(南米)、'10年=イングランド(欧州)となっている。少々変則的とはいえ、大陸別指名ローテーションは暗黙の了解なのだ。
ところが、今大会は、準決勝の4強に欧州と南米が2チームずつ分かれた。
もし、決勝戦のカードがブラジル対アルゼンチンの南米対決になれば、近年の国際評価と今大会のレフェリング査定が優秀な欧州組の上位から選ばれるとの見方が強まっている。
レフェリーもまた決勝へ“勝ちあがっていく”。
前回大会の決勝戦を担当したハワード・ウェブ審判は、御役御免で候補から自動的に外される。本命は、ビョルン・クイペルス審判(オランダ)だ。マドリード・ダービーとなった今年のCL決勝や昨年のコンフェデレーションズ杯決勝を裁いた実績は文句なし。対抗は前述のプロエンサで、リッツォーリは3番手にいる。
決勝の組み合わせがドイツ対オランダになる場合は、開催国ブラジルのリッチ審判が、候補の最右翼に躍り出ると見られている。
彼らは皆、国内リーグで力をつけ、CLやリベルタドーレス杯といった大陸カップ戦で切磋琢磨しながら、W杯の晴れ舞台にたどり着いた。
32カ国の出場国と同じく、レフェリーたちもグループリーグから決勝戦まで“勝ち上がっていく”のだ。
「鍵を握るのは、最初の試合だ。W杯ではどのチームも初戦にかけてくる。どこだって負けたくない。だから、試合展開はより戦術的になる。レフェリングの条件として、初戦はとても難しいのだ」