野球善哉BACK NUMBER
野球選手がより尊敬されるため……。
メディア対応で考える“世間”の目線。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/02/19 10:50
「何が起こるか分からん」といい続け、昨季後半に怒涛の8連勝で大逆転でCSに出場した西武の中心だった栗山巧。キャプテンを務め、チームのムードを大いに盛り上げた。
昨シーズンの終盤戦に差し掛かったころのことだった。
ロッテvs.西武の試合前のダグアウト。雨が本降りになり、試合の中止が予測されたこともあったのだろう、西武の秋山翔吾が、いつもより少しリラックスした表情で記者たちと談笑していた。
あまりに長い立ち話だったこともあり、そばを通りがかった選手たちが一様に秋山を“イジって”いた。
主犯は栗山巧。秋山の受け答えに、いちいち突っ込んでいたのだった。
その時、横を通りかかったある投手が「まだ喋ってんの?」と言葉を発した。「俺だったら、自分の調子が悪い日は喋らない」。そのひと言を聞いた、栗山の表情が一変した。
「そんなんアカンよ! 俺たちには喋る義務がある。記者の人たちだって、仕事なんやから。俺は自分の成績が悪いからって、話をしないのはどうかと思うなぁ」
日本にも「グッドガイ賞」があれば!?
個人的な感想だが、栗山はプロ野球の選手の中でも特に真摯な取材対応を見せてくれる選手だ。スポーツ新聞の番記者のように選手と密な関係を構築しづらいフリーランスの筆者のような取材者であっても、他の記者と分け隔てなく質問に答えてくれる。
栗山のほかにも、広島の前田健太や中日の山本昌、DeNAの三浦大輔、日ハムの大引啓次なども同様で、メディア間での評判もすこぶる良い。
しかし、プロ野球の全選手がそうというわけではない。露骨に、取材拒否の姿勢を態度で示す選手も少なくない。なかには、自身ではノーコメントを貫けないからといって、広報を通じて「取材禁止」を通達してくる選手もいる。
常々思うのだが……プレーの問題で腹の虫が収まらないからといってマスコミに対してぞんざいな態度で接することが、選手自身の価値をさらに下げてしまわないか。
選手(もちろん監督やコーチも)が保つべき立ち居振る舞いには、もっと理想の形があるような気がしてならない。
そんなことを思ったのは、MLBのニューヨーク・メッツ時代、記者から人柄を評価された選手に対して贈られる「グッドガイ賞」を受賞した吉井理人さんにマスコミ対応に対する意見を聞いた時だ。