スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
「ファウルは女友達のようなものさ」
ネイマール“ダイブ”論争の行方は?
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/10/18 10:32
バジャドリーとの試合でも執拗なマークを受けたネイマール。彼のドリブルが相手にとって脅威である限り、この問題は決して終わることはないだろう。
過熱する“ダイブ論争”にモウリーニョも参戦。
「ネイマールは素晴らしい選手だが、1つだけ欠点がある。(記者に向かって)君たちも知っていることだよ」
この試合でネイマールはペナルティーエリア内で倒されながらPKをもらえなかったシーンが2度あった。その点について試合後の会見で問われた際、バジャドリーのフアン・イグナシオ・マルティネス監督はそう返すことで、暗にネイマールのシミュレーションを指摘したのである。
さらにその翌日には、遠くロンドンからこれらの批判に便乗する者も現れた。ことバルサ絡みの話題には口を挟まずにいられない男、ジョゼ・モウリーニョである。
彼はCL第2節で議論を呼んだ2つのシミュレーション疑惑(1つはブラウンの退場、もう1つはアヤックス対ミラン戦の終了間際にバロテッリが獲得した疑惑のPK)について、長々と持論を展開した。
「グラスゴーとアムステルダムの試合にて、チャンピオンズリーグに“ダイブ”の文化があることが明らかになった。こうした行為を見ると悲しくなる。(中略)ネイマールやバロテッリに何をすべきか? これはフットボール界のお偉いさん方が扱う問題であり、何者でもない私は些細な意見を述べるだけだ。もし何の対応策も取らないのであれば、来週にはまた同じことが繰り返されるだろう」
ネイマールには元々“ダイブ”のイメージが。
僅か数日の間に立て続けに生じたこれらの批判にはしかし、確固たる根拠がなかった。
まずセルティック戦の退場シーンについては、ブラウン本人がネイマールに蹴りを見舞ったことを公に認め、ファンに謝罪まで行なっている。試合後レノンは「ビデオをよく見たら、接触などなかった」と擁護していたものの、ブラウンがネイマールの背中を蹴ったのは事実なのだ。
バジャドリー戦の2つのシーンにしても、VTRを見る限り誰の目にも明らかなファウルだっただけでなく、ネイマールの倒れ方も大袈裟なものではなかった。
にもかかわらずこれだけの批判が続いたのは、恐らく元々ネイマールに「テアトレロ」や「ピスシネロ」のイメージがあったからだろう。