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自力優勝を狙うアロンソとウェバー。
両者の泣き所は“8基目のエンジン”。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2010/11/05 10:30
一時はチームメイトのベッテルとの不仲も伝えられたウェバー。なにかとシューマッハと比べられて大変なアロンソ。どちらも一歩も引けない年間王者争いとなっている
なぜエンジンがわずかしか残されていないのか?
エンジンの全開率が19戦中もっとも高いモンツァで行われるイタリアGPでは、アロンソを含め合計21人のドライバーがフレッシュエンジンを投入してきた。
だが、その中で虎の子の8基目を下ろしたのはフェラーリ勢だけだったのだ。あとは7基目、あるいはまだ6基目という状況だった。
なぜ、アロンソは早々に8基目のエンジンを投入しなければならなかったのか。
それはシーズン序盤の中国GPとマレーシアGPで、エンジンに完治不能のトラブルを抱えてしまっていたからである。そのため、アロンソは残りのグランプリを6基のエンジンでやりくりしなければならず、イタリアGPで早くも8基目を使用しなければならなかったというわけだ。
これと似たような状況にあるのが、ランキング2位のウェバー。
オーストラリアGPとトルコGPでトラブルに見舞われたウェバーもまた、残りのグランプリを6基でやり繰りしてきた。そのため、ウェバーはレッドブルにとってレース前から有利ではないと予想されていたイタリアGPで、敢えてフレッシュエンジンを温存。中古エンジンでしのがなければならなかった。
さらにウェバーは残っていた8基目のフレッシュエンジンを韓国GPで下ろしたにもかかわらず、クラッシュしている。これでウェバーは無得点に終わっただけでなく、エンジンの状態に不安を残したままブラジルへ向かうこととなった。
エンジンを温存する3位以下のドライバーにも優勝の可能性が。
確かに、残りの2戦はいずれもエンジンを酷使するグランプリではない。
ブラジルGPが行われるインテルラゴスは高地であるために空気が薄く、結果的にエンジンに対する負荷が小さい。またアブダビGPが開催されるヤス・マリーナ・サーキットは直線以外は曲がりくねっているために全開率が低く、昨年もエンジンに問題を抱えてリタイアしたドライバーはいなかった。
とはいえ、高いパフォーマンスを維持するため、耐久性を約2000kmにしか設定していない現在のグランプリエンジンは、走行距離(1レース平均は300km強。他に予選・フリー走行などもある)とともにパフォーマンスは落ちてくるし、使い方を誤ればブロウする。