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ドルトムント16年ぶりのCL決勝進出!
“あと1点”をめぐるレアルとの死闘。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2013/05/01 13:25
「今日は負けたが、いずれにしても我々は決勝にふさわしいチームだったと思うよ。週末は(ブンデスでの)バイエルン戦だが、今晩の選手祝勝会を止めるつもりはないよ! 選手たちは操り人形じゃないんだから」と試合後にコメントしたクロップ。
後半38分、ついにこの日初めてのゴールが生まれる。
レアルは、リスクを冒して攻めたことでピンチを招いたものの、ゴールは許さない。そして後半23分にシャビ・アロンソに代えて、ケディラを送り出す。これが合図となり、再びあの猛攻が始まった。
大きなリスクを背負って前に出ていくというモウリーニョ監督の采配は、チームを正しい方向へと導いていったのだ。
後半25分のロナウドのシュートはバーの上にわずかに外れる。1分後、右サイドからのクロスが流れるとディマリアが飛び込むが、あと少しのところで届かない。
そして、後半38分、カカが出したパスに右サイドで反応したエジルが、クロスを送ると、ベンゼマが豪快に押し込んで、ついに、この日はじめてのゴールが生まれた。
残りは7分。ロスタイムを含めれば10分以上は確実にある。
ドルトムントにゴールを許さず、もう2点を加えれば2試合の合計スコア4-4で並び、アウェイゴールの差で相手を上回る。そしてこのペースで攻撃を続ければ、2点取るのも夢ではない――。
ベンチに控えていたカシージャスが給水ボトルを持ってピッチへ。
後半39分、ケディラがミドルシュート。相手の必死のスライディングにブロックされる。その2分後、右からのクロスにヘディングで合わせたのはセルヒオ・ラモスだ。これはGKにキャッチされる。センターバックの彼も、フォワードのように最前線に残り、ゴールを狙う。
後半43分、ベンゼマがエリアにさしかかるところからシュートを放つ。ディフェンダーにあたりコースが変わる。かろうじてバイデンフェラーがさわり、CKに逃げる。
そのCKからだった。左サイドに流れたボールをベンゼマが拾うと、相手選手の位置をよく見て、短いパスを出す。ニアサイド、落ち着いてトラップしたセルヒオ・ラモスが左足で強烈に振りぬく。放たれたボールは、ゴールネットの上につきささる、2点目だ。
あと1点。試合の行方はこれでもう、わからなくなった。スタジアムの空気も揺れていた。レアルの逆転もあるのではないか……。
そして、後半のロスタイムに入る直前のこと。すでに10分前の時点で足をつりながらも懸命にプレーを続けていたモドリッチが、相手ボールになりそうなところで勢いよくスライディング。ドルトムントのS・ベンダーの左足を蹴ってしまい、ファウルとなった。
プレーが止まったこの瞬間、レアルのベンチから選手たちが給水ボトルを持って出ていく。先陣を切ったのは背番号1のユニフォームを着たカシージャスだ。モウリーニョ監督との確執もあり、長年にわたり守護神として君臨してきた彼はレギュラーポジションを失っている。この試合でレアルが勝ったとしても、おそらく決勝戦で彼にチャンスが回ってくることはなかったはずだ。にもかかわらず、彼はサブの選手として当たり前のことを、全力でやっていた。