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ドルトムント16年ぶりのCL決勝進出!
“あと1点”をめぐるレアルとの死闘。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2013/05/01 13:25
「今日は負けたが、いずれにしても我々は決勝にふさわしいチームだったと思うよ。週末は(ブンデスでの)バイエルン戦だが、今晩の選手祝勝会を止めるつもりはないよ! 選手たちは操り人形じゃないんだから」と試合後にコメントしたクロップ。
クラブ破産の危機から復活を遂げたドルトムント。
ドルトムントのキャプテンはケールだが、彼は戦術的な理由や怪我などにより、試合に出場しないことも少なくない。この試合でも、後半42分からの出場だった。
一方で、バイデンフェラーはゴールキーパーというポジションもあって、ほとんどの試合に出場するため、本来はケールのものであるキャプテンマークを巻いて試合に出ることも多い。
古き家族像で例えるなら、ときに家を空けるケールが父親の、常に家を守るバイデンフェラーが母親のような役割を担い、若い選手たちがひしめくチームを支えてきたのだ。今から2シーズン前、ドルトムントが9シーズンぶりのリーグ優勝を決めた際に、ケールではなく、バイデンフェラーがマイスターシャーレをかかげたのも、そんな理由がある。
バイデンフェラーは続けてこう語っている。
「このチームで決勝を戦うチャンスを与えてもらえるかもしれないことには感謝しなければいけないよね」
2002年にドルトムントにやってきてから、クラブは破産の危機に陥り、2部降格の恐怖とも戦ってきた。そんなときに支えになったのが、これから味わえる舞台の存在だった。
「僕は長年にわたって、いつも考えてきたんだ。(CL決勝のような最高の舞台は)まだ、経験してないんだぞ、ってね」
確かに一部の識者の間では、ドルトムントは優勝候補の一つだったかもしれない。ただ、8シーズン前に破産の危機に陥ったクラブが、短い期間で、ここまでの復活を遂げるのはおとぎ話のようだ。
しかし、タイトルを取れなければ、ドルトムントは人々の記憶の中に深い痕跡を残すことはできない。もちろん、歴史にだってそうだ。
5月25日、サッカーの母国にあるウェンブリー・スタジアムで行われる決勝戦で、このおとぎ話を完成させるための日々が、今、始まったのだ。