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優勝候補ドイツに何があったのか?
イタリアに惨敗した“自滅”の真相。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/06/29 12:05

優勝候補ドイツに何があったのか?イタリアに惨敗した“自滅”の真相。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

フンメルスは「戦術的に優れた相手に0-2とされてしまうと、難しい」と語り、キャプテンのラームは「このチームにはポテンシャルがあった。だから、もっとできたはずなんだ……」と無念のコメントを残した。

後半開始直後、ロイスの活躍こそあったが……。

 後半が始まってしばらくの間は、ロイスを中心にドイツはチャンスを作ることができた。

 もっとも後半4分にラームはペナルティエリア内でフリーのシュートを外してしまったし、ゴールに迫ってもあと一歩のところでイタリア守備陣に防がれてしまう。そして、後半がはじまって20分が過ぎると、ロイスというカフェインの切れたドイツは眠ってしまったかのように戦う気力を失った。

 その後にシュバインシュタイガーをDFラインに下げて、ミュラーを投入するが、効果的だったとは言えない。むしろ、気持ちだけ前に行き攻撃は空回りして、前がかりになったところで何度もカウンターを食らうばかりだった。

 後半ロスタイムにエジルがPKを決めたことで、最終的に1-2と1点差の結果となったが、試合内容から考えれば……イタリアの度重なるシュートミスがなければ、1-5や1-6となってもおかしくない試合だった。

試合直後、あっさりとロッカールームへ消えた選手たち。

 スペインとイタリアという決勝に進んだ両チームに及ばないのはともかく、スペイン相手に善戦したポルトガルとも、あまりに対照的。ベスト4に勝ち進んだチームの中で、ドイツは最低の印象を残した。自滅である。

 試合が終わると同時にスタジアムに流れた歌は、「Seven Nation Army」だった。2006年のドイツW杯でドイツなどを下し、最終的にタイトルを手にしたイタリア代表が歌っていたことでドイツでも有名になった曲だ。今ではドイツサッカーと切っても切れない関係にあり、ドイツ中のスタジアムで耳にすることが出来る。

 しかし、ドイツが学ぶのは、どんな曲を聴くかではないだろう。2006年W杯のドイツとイタリアの試合では、延長戦になってからプレーが止まるたびに、イタリア代表のベンチに座る選手たちはタッチライン際に置いてあった給水用のボトルを手に、我先にと出て行き、ピッチで戦いを続ける選手たちを守り立てていた。今のドイツ代表からは決して見られないような、チームとしてのまとまりがあった。あの試合のピッチに立っていた選手はともかく、多くの選手があの一戦を目にしていたというが、何も学んでいなかったようだ。

 試合が終わったあと、90分の戦いを終えた選手たちは少しだけ悔しそうな素振りを見せると、淡々とロッカーへ引き上げていった。控え選手たちの中で、試合に出た選手を慰めたり、ファンのもとへ挨拶に出たのも5人だけ。残りは、あっさりとロッカーへと消えて行った。

 監督が策に溺れて暴走し、選手たちのまとまりも決定的に欠けていたのが今大会のドイツ代表だった。

※文中、「ベンチに座っていたL・ベンダーとギュンドガンは笑いながら、話をしていた」とありましたが、「ギュンドガン」を「ヘベデス」に修正いたしました。お詫びして訂正いたします。

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