EURO大戦2012BACK NUMBER
優勝候補ドイツに何があったのか?
イタリアに惨敗した“自滅”の真相。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/06/29 12:05
フンメルスは「戦術的に優れた相手に0-2とされてしまうと、難しい」と語り、キャプテンのラームは「このチームにはポテンシャルがあった。だから、もっとできたはずなんだ……」と無念のコメントを残した。
即興のコンセプトが破たんし、選手が迷い出したドイツ。
試合の序盤は、ケディラが前に出て行くことでいくつかチャンスをつかんだ。6分には右サイドから鋭いクロスを送り、12分にはボアテンクのクロスに飛び込んだことで、イタリア守備陣が慌て、あわやオウンゴールかという場面も生まれた。
ただ、前半も15分を過ぎるとイタリアも落ち着きを取り戻す。勢いがなくなると、苦しくなるのはドイツだ。コンセプトは破たんし、選手に迷いが出始めていた。
案の定、前半20分に最初の悪夢が訪れる。左に開いたカッサーノにセンターバックのフンメルスが釣り出される。フンメルスとボアテンクの2人でプレッシャーをかけにいったがあっさりかわされ、クロスを許す。そして、中央にいたバドシュトゥバーも簡単にバロテッリのマークを外し、イタリアのエースにヘディングでのゴールを決められてしまう。こうした形からの失点は大会直前のスイス戦(大量5失点で敗戦)でも見られた課題だったが、手つかずのままだった。
今大会ではじめて先制点を許したものの、そこからエジルの多彩なプレーを起点に同点ゴールを目指したドイツ。だが、最後のエリアで相手の体を張った守備に阻まれ続けていた。
2点リードされた状況で、他の選手の交代時に笑っていた控え選手達。
そんな中、36分。ドイツのコーナーキックの直後だった。
相手にボールを拾われると、攻撃から守備への切り替えが遅れた。その結果、イタリア陣内、左サイドの低い位置にいたモントリーボをフリーにしてしまう。そこからDFラインの裏へ送られたロングパスに反応したバロテッリに、この日2点目のゴールを許す。ラームをはじめ、多くの選手が試合後に語っている。あの2失点目が大きかった、と。
そして、後半が始まる直前に問題のシーンが起こった。
ハーフタイムに、クローゼがゴメスに、ロイスがポドルスキーに代わることになっており、コーチのフリックが、慌ただしく手元のボードを見せながらロイスに細かい指示を送っている、そのときだった。目の前にロイスがいるのにもかかわらず、ベンチに座っていたL・ベンダーとヘベデスは笑いながら、話をしていたのだ。
これは親善試合ではない。
2年かけて準備をしてきたEUROの決勝進出がかかった大一番である。肩を叩いて檄を飛ばしたり、給水用のボトルを差し出すわけでもない。巻き返しを図るためにチームメイトがピッチに飛び出す直前に、談笑しているとは何事か。
自らの采配に万能感を覚えて意図のわからない選手起用をはじめる監督が最低なら、緊迫した試合から気持ちを離してしまった選手も、最低だ。
もはや、チームは一つではなかった。