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W杯最終予選に必要な最後の一枚。
永井謙佑はジョーカーたり得るか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/04/09 10:30
U-23代表では11試合出場8得点と結果を残しているが、A代表では1試合出場にとどまっている永井謙佑。今後の活躍次第ではA代表とロンドン五輪代表の掛け持ちの可能性もある。
プロでの厳しい生存競争がゴールへの執着を生む。
これまで永井というストライカーはあくまでチームで得点を取ることにこだわってきたように思う。自らシュートを打つことが第一の選択肢にはあるのだが、“チャンスメーカー”としての意識も相当に強い。ゆえにスピードで縦に抜いてからアシストや味方の得点につなげるプレーが多いのが特徴だ。しかしながらその意識が強くなればなるほど、ゴール前の迫力が物足りなくなってしまっていた。
福岡大時代にはアシストにこだわるあまり、乾真寛監督から「アシストじゃお前にとって銭にはならん。最後にパスなんか考えるな」と“ラストパス禁止令”が出たほど。プロになって再びその傾向が強くなりかけていたが、名古屋でレギュラーとして定着したいという思い、そしてロンドン五輪代表でレギュラーから外された危機感が一昨年のアジア大会で得点王になったときのようなゴールへの執着を甦らせたようだ。
「(シュートを)決められるチャンスがあったのに、そこをしっかりと決められなかった……。かなり悔しいっすね」
結局ノーゴールに終わった大宮戦の後、ミックスゾーンに現れた永井は顔をしかめ「悔しい」という言葉ばかり繰り返した。その悔しさが天津戦のゴールに結びついていく。
W杯最終予選のピッチに立つには克服すべき課題が。
元より永井の決定力は高い。角度のないところから決めるシュートセンスがあり、GKとの駆け引きもうまい。
シュートへの意識がさらに強まっていくことができれば、感覚も磨かれてくる。J屈指の攻撃力を誇る名古屋でゴールを量産していくことは可能だと言える。
それと永井に求められるのはパス、トラップなど基本プレーにおいてミスを減らすことだろうか。今、A代表に呼ばれている清武にはミスが少ない。やはり勝負どころで使うとなれば、ひとつのミスが失点につながる危険性もあるからだ。
スピード、決定力という長所を磨き、課題を克服していければ自ずとザッケローニの目に留まってくるはず。昨年には北海道での候補合宿にも呼ばれており、既に代表の大枠には入っている。6月の最終予選3連戦のメンバーは五輪代表も含まれることが確実視されているだけに、永井にとっても手の届くところまでは来ていると言えるだろう。