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MLBのダルビッシュは変化球投手!?
成功のカギは「ボール」と「湿度」。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2012/03/19 10:31
デーブ・マダックス投手コーチと捕手のヨービット・トレアルバとマウンド上で話し合うダルビッシュ有。2度目の登板は不調とされ、3回61球を投げ2失点。ヒットは2本だけだが、4四球は気になるところ。
メジャー球の感触への慣れと乾燥対策が課題に。
日本とメジャーリーグの公式球の感触は、まったく違う。
昨季から採用された日本のミズノ製のNPB公式球は、ボールを握ると指先に吸いついてくるような、グリップ感がある。革の質がいいのだと思う。
ところが、アメリカの革は滑りやすい。ツルツルしている、と言ってもいいくらいだ。縫い目も高いし、品質もバラバラ。
この感触の違いを埋めようとすると、これまで使っていなかった部位に負担がかかり、故障が発生しやすくなる──。それが日本人投手に与えられた課題だ。
しかもダルビッシュがスプリング・トレーニングを行っているアリゾナは、極度に乾燥している。私の取材中も、保湿クリームが手放せないほどで、指先が大切な仕事道具である投手にとっては、その管理が難しいだろうと思わされた。
ゲームを通してのボールへの慣れ、そして空気の乾燥という課題をどう解決するのか。開幕までひと月を切って、そこが注目点になる。
乾燥地域でのダルビッシュは変化球投手に変貌!?
しかし不思議なもので、ダルビッシュの投げるカーブやスライダーには違和感がない。素晴らしいコントロールを見せる。
そうなると思いきり腕を振るフォーシームを投げる時の問題なのかとも思う。今後は、変化球の割合が増えていく可能性もある。
ちなみに初めてのオープン戦の登板となったパドレス戦での球種の割合を見てみると、
・フォーシーム 13
・スライダー 10
・カッター 6
・カーブ 4
・ツーシーム 3
になっていた。
三振を取った球種はスライダーが2つ、カーブがひとつ。変化球がかなり有効なのである。
このデータを取ってみても、フォーシームの割合は他の剛球投手と比べれば少ない。公式戦に入って、特に乾燥している地域では変化球、特にスライダーの割合がより増えていくのではないか。
今季、ダルビッシュの投球を見る場合、気象条件に目を配ることをオススメする。