ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
課題と反省ばかりが残るエジプト戦。
五輪代表は“戦う集団”になれるのか?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/08/12 08:01
トップ下で縦横無尽に活躍した山田直輝。永井謙佑へのアシストとなったパスは、30メートルに及ぶかという見事なスルーパスだった
山田、清武といった新戦力が頭角を現したのは収穫。
一方で、大きな収穫もあった。
関塚隆監督は、最終予選突破のためには、「新戦力が出てくることが必要」と、言っていた。今回は、山崎亮平、清武弘嗣、原口元気ら今までチームを支えた攻撃陣が不在。そんな中、山田直輝が1ゴール1アシストで結果を出した。
山田は、当初、このエジプト戦メンバーには入っていなかった。原口が負傷した代わりに追加招集されたが、「1回、外されてクソっと思った」という気持ちをピッチにぶつけた。「アピールできたと思うけど、これで五輪代表に生き残れたかどうかは分からない。レッズで結果を出していかなければ、この舞台には立てないと思うので、僕は結果を出し続けるだけです」と、山田は厳しい表情で語ったが、戦力となるメドがついたのは、チームにとって大きな収穫だった。
また、清武がA代表の韓国戦にデビューし、香川真司と本田圭佑のゴールをアシストをして、チームの勝利に貢献した。「海外組と楽しくやれた。パススピードとか動き方とか、すごく勉強になったんで、五輪代表に持ち帰って、みんなの刺激になれるようになったらいい」と、清武は語った。
A代表の薫陶を受けて清武は、一味違う存在感を醸し出し始めている。仲が良い若いチームに楔を打ち、高みを目指した、戦える集団にするには、清武のような経験をした選手が、チームを引っ張っていくことが必要になってくる。
戦える集団に変わらなければ、五輪への道は開けない。
エジプト戦後、選手の表情は一様に厳しかった。前半、先制された後、山田と永井謙佑のゴールで逆転したが、後半は単純なミスも多く、淡々とした展開で追加点を奪えなかった。勝って浮かれている顔など、ひとつもなかった。
「今日みたいな試合をしているようじゃ、まだまだです。最終予選は、何かが起こるような試合にしてはいけない。自分らが主導権を握ってしっかり勝てるように、課題をもう1回、見直して、もっと気持ちを込めて戦わないといけない」
権田は、自分に言い聞かすように言った。
最終予選まで、残り1カ月強。悪癖を修正し、集中力を保ち、戦える集団になって最終予選に挑めるか。同じ過ちを繰り返した先に、ロンドンはない。