なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
W杯優勝で盛り上がるなでしこリーグ。
熱気を持続させるのに必要なことは?
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byToshiya Kondo
posted2011/08/07 08:00
7月24日(日)にホームズスタジアム神戸で開催された、なでしこリーグのINAC神戸レオネッサvs.ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの試合。スタンドは観客で埋め尽くされた
裾野が広がらなければ、なでしこの充実もあり得ない。
サッカー界をピラミッドに例えるなら、頂点である代表が充実する一方で、底辺である一般レベルでの女子サッカーの普及率は極めて低い。
一般論ではあるが、男子の場合は「サッカーより野球のほうが稼げるから」などと運動能力のある選手がサッカー以外のスポーツを選択するケースはあるが、女子の場合はそもそものプレー環境、競技に触れる、始める機会がほぼ無いに等しい。
例えば日本全国でサッカー部がある中学校の学校数と、生徒数を男女で比較してみると、男子6,909校/221,407人に対し、女子625校/3,538人(日本中学校体育連盟の平成22年度部活動調査集計より)。
高校では、男子4,185校/148,764人に対し、女子627校/8,421人(全国高等学校体育連盟の平成22年度加盟状況より)。
これらのデータを見てすぐ分かるように、とにかく裾野の環境を作ることが急務だろう。
そしてその延長線上で、ようやくなでしこリーグの各クラブの環境整備というところにたどりつくのではないか。
選手の受け取る金銭面だけではない。例えば練習場を転々としなくてすむように、平日の仕事に間に合わせるための試合後の夜間バス移動などを強いられなくて済むようにしていかねばならない。
これらの問題がアマチュアであるが故の宿命なのであれば、アマチュアから一歩前に進めて行くことも考えねばならないだろう。だが、もしもプロ化してもそれが1年で終わったのではほとんど意味がない。継続を前提とした環境整備こそが必要なのだ。
W杯優勝という快挙を一過性の祭りにさせないために。
日本サッカー協会HP内にある小倉純二会長のコラムには「アメリカを見ると、サッカーの登録人口は男女合わせて約450万人で、そのうち47%が女子だそうです。日本の女子サッカーはわずか3%。サッカー先進国並みの環境にしていくことが必要ですし、なでしこリーグの集客アップも重要。これまでの女子サッカーというのは、選手の犠牲の上に成り立っていましたから、JFAとして女子のクラブチームを支援するシステムをつくっていく必要があると考えています」とある。すべて、一朝一夕で片付く問題ではない。
佐々木則夫監督は優勝後会見で「女子代表が30年という歴史の中で積み上げてきたことが、今回のW杯優勝につながったと確信しています。あらためて優勝の重みを感じます」と話している。
この先のことに思いを巡らすと、その言葉の意味を改めて感じる。今回の優勝余波が去ったあとに、少しでも多くのものが残っていれば、と思う。