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UEFA杯という大きなヒント。 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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posted2005/02/08 00:00

UEFA杯という大きなヒント。<Number Web> photograph by AFLO

 1位スペイン、2位イングランド、3位イタリア、4位ドイツ、5位フランス、6位ポルトガル、7位オランダ。これは欧州クラブ戦戦における過去5シーズンの戦績を集計したUEFA(リーグ)ランキングの最新の順位だ。

 1位スペインのポイントは70717点。2位イングランド(57938点)との間には、まだ13000点もの開きがある。

 CLの16強に残っているスペイン勢は、バルサとマドリーの2つのみ。一方のイングランド勢は4チームすべて(チェルシー、マンU、アーセナル、リバプール)が健在だ。とても勢いを感じさせる。もう少し差は詰まっても良さそうな気もするが、実際は今季のスタート時点から、約800点しか詰まっていない。

 理由は、UEFA杯に見ることができる。こちらではスペイン勢が好調だ。出場4チーム(ビルバオ、セビーリャ、サラゴサ、ビジャレアル)は全て32強に駒を進めている。CLからの脱落組であるバレンシアと合わせれば計5チーム。CLと合わせれば計7チームになる。イングランド(6チーム)に総数で上回る。詰まらない理由はここにある。

 UEFA杯は、各国リーグの元気度を推し量るバロメータといわれる。金持ちクラブが出場するCLと違い、UEFA杯出場組は常識的な予算で活動する中規模クラスだ。金の力に任せてスターを集めることは不可能である。強化のポイントは工夫とサッカーそのものの高い質。そこでスペイン勢は総じて高いレベルを保っている。とかく目はバルサとマドリーに向きがちだが、本来、我々日本にとってのヒントは、ビジャレアルなどに代表されるUEFA杯出場組のサッカーに隠されている。(僕が「4-2-3-1」てな原稿を、くどくどと書く理由もそこにあるのだが、この際、それはさておき……)

 そうした意味で、いま僕の目に最も止まるのがAZアルクマールだ。バルサもチェルシーも良いけれど、8000人しか入らないスタジアムをホームにするこの弱小チームは、いま本当に見事なサッカーを展開している。ファンハーレン、ラントザートといった選手の活躍もさることながら、なにより讃えるべきはコ・アドリアンセ監督の采配だ。進歩的であり攻撃的。まさに工夫と質を追求した末の頭脳的なサッカーだ。UEFA杯のダークホースに浮上したといえる。

 オランダそのものも元気が良い。UEFA杯の32強に、CLから脱落してきたアヤックスと合わせて計4チームが残っている。これはスペインに次ぐ数であり、UEFAランキングを昨季の7位から6位に上げる原動力になっている。

 UEFAランキングは、ご存じの通りCLやUEFA杯の出場枠の割り当てを決定する物差である。7位ではCLの出場枠は2になるが、6位になると3に増える。CLやUEFA杯は街対街の戦いで、国対国はユーロやW杯予選。とかく我々はそうした視線で欧州サッカーを眺めがちだが、実際にはCL、UEFA杯にも国対国の要素は含まれるている。それぞれの国のリーグのレベルが欧州で何番目に位置するのかは、UEFAランキングを見れば一目瞭然だ。

 つまり国対国の戦いには、2つの物差しがある。代表のレベルのみならずリーグのレベルまでチェック可能。UEFAランキングは、欧州各国に切磋琢磨を促す大きな役割を果たしている。Jリーグのレベルは、欧州に入れば何番目とは、永遠に推測の域を脱し得ない謎になるが、欧州人にそれはない。常に外から刺激を受けやすい状態にある。まさに戦線状態だ。観念的な理屈に埋没していてはレベルは上がらない。すっかり島国のリーグと化し、独自の盛り上がり方に終始するJリーグを見るにつけ、僕にはその様子がとても羨ましく見える。

 UEFA杯は、CLより1週間早い2月16日に3回戦の口火を切る。CLとセットで眺めると、もう一つの国対国の関係まで見えてくる。欧州サッカーの謎を解く大きなヒントの一つだと僕は思う。

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