セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
セリエAの天敵、レアル・マドリー。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byAFLO
posted2005/02/09 00:00
スペイン・メディアのインタビューで露見したFWアドリアーノ(インテル)の「レアル入り願望」発言は、レアル・マドリーのサッキTDの一言で一応の決着を見た。
「アドリアーノを息子のように思っているが、インテルから彼を奪おうとは考えていない」
このコメントにより、インテルとセリエAに対するサッキの配慮がイタリア国民に伝わった。そして、アドリアーノへの非難に始まり、最終的にはレアル・バッシングにまで及んだ6日間の「興奮」は沈静化したのである。
サッカー界の前途を託されたストライカーだけに、レアルに限らず世界中のクラブから誘いの声がかかるのは当然なのだが、今回の場合は、発端がスペインだったことが騒ぎを拡大させた。
ご存知のとおり、2001年にMFジダン、その一年後にFWロナウドとセリエAのスターを略奪されているだけに、セリエA関係者の中にはレアル・マドリードのペレス会長に対して嫌悪感を抱いている者も多い。また、選手だけでなく、イタリア・サッカー界のいわば中枢であるアリーゴ・サッキ氏までが、昨年末、電撃的にペレス会長の手中に収められたとあっては、レアル・マドリーはもはやセリエAの天敵と化したと言っても過言ではない状況にある。
今回の事件については、サッキが、パルマのTD時代にアドリアーノの才能を人一倍買ってインテルから獲得した経緯があるだけに、信憑性は十分だった。
「サッキはまるで僕のおとうさんだ。若い僕を育ててくれた」
恩師への思いを明かし、将来のレアル入りを示唆する言葉がアドリアーノの口から飛び出したのだった。また、ペレス会長の「私にとってアドリアーノはナンバー1の選手。彼のステキな言葉に感謝している」という発言が、インテル側を刺激した。ロナウドを獲得したときと同様の手口だったからだ。
ちょうど同じ時期に、ミランの司令塔カカに対し、チェルシーのアブラモビッチ・オーナーがラブコールを送っているというニュースが流れた。それを受けたカカは、イタリアのマスコミに「ミランに所属している以上、ミランでプレーすることしか考えていない」と言い切り、ミランのサポーターを安心させた。
アドリアーノの「レアル入り願望」も、そもそもは聞き手スペイン人へのリップサービスのつもりだったのだろうが、カカの律儀なコメントに比べると安易さは拭えない。意味深な発言をしたアドリアーノは、インテルから弁明を求められ、一方でインテルのフロントは、「教育がなっていない」とマスコミから非難された。
しかしながら、「火のないところに煙はたたぬ」というが、タイトルがなかなか望めないインテルでは、結局はアドリアーノを引き留めることは難しいかもしれない。