MLB Column from WestBACK NUMBER
トレードを成功させるには・・・。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images/AFLO
posted2004/08/20 00:00
7月31日のトレード期限日(とはいえ、メジャーの現行規則では制限付きトレードはそれ以降も可能だが…)が過ぎてから、ほぼ2週間が経過しようとしている。関心を集めたランディ・ジョンソンの去就は結局ダイヤモンドバックス残留で決着した。
そんな中、今回大胆なトレードを行ったのはドジャースとレッドソックスだろう。ドジャースはロデューカ、モタ、レッドソックスはガルシアパーラとそれぞれ看板選手を放出し、チーム力のテコ入れに着手した。奇しくも両チームのGMは新進気鋭の若手コンビだ。30歳のエプスタイン(レッドソックス)と31歳のデポデスタ。リーグ最年少GMらしい小気味いい英断だった。
「思い通りのトレードを成功できないのが自分の責任なら、何もしないのも自分の責任。それならばチームのためにベストになることをしたかった」
当初の目的通りランディ・ジョンソンとチャールズ・ジョンソンのバッテリーを獲得できなかったが、期限までに2つのトレードを成立させたデポデスタGM。8年ぶりのプレーオフ進出を厳命されての就任1年目。何もせず静観できるほど、心のゆとりなどなかったことだろう。結局ペニー、フィンリーらを獲得したものの、逆に捕手と中継ぎに不安を残す結果となり、メディアにはあまり評価を受けられなかった。
一方のエプスタインは好対照。来季のFA移籍が確実なガルシアパーラに見切りをつけ、代わりにカブレラを獲得したばかりか懸案だった1塁にミンケイビッチまで補強。多くの野球解説者たちがその才腕を褒めそやした。
しかしトレードを評価する場合、各選手の年俸や成績だけでは推し量れない要素があるのだ。1つの例を上げよう。1997年のメッツでの出来事だ。当時のGMはシーズン半ばでGMに就任した弱冠34歳のフィリップス。ブレーブスと地区首位争いを演じるメッツとしても、トレードによるチーム補強が必要だと考えた。そしてトレード期限に合わせカブスと3対3のトレードに成功。懸案事項だったリリーフ陣にウェンデル、ロハスの2投手を獲得。特にロハスは右投手ながら左打者に抜群の実績を残しており、当時のクローザーだったフランコまでつなぐ投手リレーが完成したと、地元NY紙がトレードを絶賛した。
ところが、実際はこの両投手が大誤算。登板する度に失態を演じ、次第にファンからブーイングの嵐を浴び非難が集中。ロハスに至っては「NYで投げるのが怖い」と完全に萎縮。最少得点差で逃げ切るメッツの勝ちパターンは完全に崩壊。ワイルドカード争いからも転落し、地区3位に終わった。
選手は機械ではなく、それぞれに個性を持った人間だ。環境の変化に大きな影響を受けてしまうこともある。もちろん、GMにとってその要素を加味してトレードを考えるのは至難の業といえるだろう。
8月1日以降11日まで、ドジャースの成績は7勝2敗に対し、レッドソックスは6勝4敗。さらにガルシアパーラを獲得したカブスは6勝3敗、ロデューカ、モタを得たマーリンズは3勝5敗という状況だ。現時点ではドジャース以外、どのチームもトレードが後半戦快進撃に繋がっていない。果たして本当にトレードを成功させたのはどのチームなのか。シーズン終盤まで様子をみてみるしかない。