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石川遼と斎藤佑樹の
父母に共通する子育て論。
~「教育」から読む2人の“王子”~
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph bySports Graphic Number
posted2011/06/22 06:00
『はばたけ、佑樹』 斎藤しづ子著 小学館 1300円+税 / 『石川遼の育て方』 石川勝美著 学研 1300円+税
石川遼と斎藤佑樹。2人の親が書いた子育て論を読み比べてみた。「教育」というポイントから、2人の“王子様”について思うところがあったからだ。
「ゆとり世代論」。'03年春に、国の教育指針が「詰め込み型」から「ゆとり型」へ変わった。この影響で、'87年から'94年頃に生まれた20歳前後の若者が「自己中心的」「我慢しらず」などのイメージで捉えられるという――。
'91年生まれの石川、'88年生まれの斎藤は、まさにこの世代だ。厳しい競争を続けるが、ガツガツしておらず、スマート。異種目の2人のプリンスが同時代に出現した背景には、「ゆとり」の影響があると感じてきた。きっと、ぬくぬくと育ってきたんだろう、という。まぁ半分はおっさん世代のひがみなんだが。
ところが、石川遼の父、勝美氏が著した『石川遼の育て方』を読むに、その情熱に圧倒された。
「子供が本気であるならば、親はそれ以上に本気にならなければ本当にサポートしたとは言えない」
「私たち夫婦は子どものためにすべての時間を使ってきた」(斎藤家)
「今日はいいやと1日休むとそれを取り戻すのに3日かかる。本気で夢をかなえさせたいならば、1日休むことの恐ろしさを徹底して教えなければならない」
勝美氏の持論は「努力を継続する」。これを息子に叩き込んだ自身の姿を「巨人の星」の星一徹にもたとえている。読後は身が引き締まる思いだった。
いっぽう、斎藤佑樹の母、しづ子さんによる『はばたけ、佑樹』は母性愛が実直に描かれており、ホロリとさせられた。
読み比べると、2人の王子様の家庭での教育論にいくつかの共通点を見出せる。
まずは父親が「熱血型」である点。遼が小五の頃、友達との遊びに熱中して一度だけ練習をサボった。すると勝美氏は遼の直後の大会出場をキャンセルする。「ライバルに失礼」という理由からだ。
斎藤家も「私たち夫婦は子どものためにすべての時間を使ってきた」と言い切っている。元野球少年の父は仕事で都合がつかない場合を除き、とにかく毎試合、息子のプレーをチェックし続けた。現在でも「なかなかほめない」。また、佑樹が大学3年時、週刊誌に交友関係を書かれた際には父が「浮かれていられる場合なのか!」と電話口で激しく叱責した。その後、佑樹が両親との連絡を1週間ほど絶ったエピソードも紹介されている。