日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
鹿島オリヴェイラ監督の“魔術”を、
日本代表の南ア対策に導入すべき!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2009/12/12 08:00
鹿島アントラーズの指揮官オズワルド・オリヴェイラが、前人未到のリーグ3連覇を通じて教えてくれたことがある。
それは「コンディション調整」の巧妙さ。今の岡田ジャパンにぜひとも、取り入れてほしい要素だ。
「コンディション調整」は大きく2つに分けられる。シーズンを通してのロングスパンでの調整と、もうひとつはその試合で100%の力を出すための限定的な調整。前者は日々の練習に加えて休養や疲労回復を含めた調整を指し、後者は試合直前の練習やウオーミングアップなどである。オリヴェイラはこの両面で臨機応変に、選手たちのコンディションをコントロールしてきた。
川崎との再試合で見た、鹿島の見事なウオーミングアップ。
「限定的な調整」の一例としてオリヴェイラの凄さを見たのが、豪雨によって中断された川崎フロンターレとの再試合(10月7日)だった。後半29分1秒から川崎リードの1-3で再開。鹿島は開始わずか9秒でセットプレーから追撃の2得点目を奪い、結局は1点差で敗れたとはいえ、ほぼ一方的に攻めまくった。
記録上、この試合でチームワーストの5連敗を喫したものの、チームは自信を取り戻すことに成功した。終盤の5連勝につながるきっかけとなった。
この背景には、ウオーミングアップの方法を“短時間決戦用”に変える、というオリヴェイラの奇策があった。試合直前、ハーフコートでのウオーミングアップの際に何と紅白戦を指示。試合同様に激しいプレーと運動量を求め、アップという言葉の域を超えるほどの内容であった。
アップ後は熱くなった気持ちを冷まさないために選手たちをロッカーにも戻らせなかった。「試合を20分ぐらいやった状態で入るため」(鹿島幹部)という作戦は見事に成功したのである。
1年を通して、選手とチームの体力を徹底的に管理した。
今シーズン、ロングスパンにおけるオリヴェイラのコンディション調整法もまた、見事であった。
「選手は生身の人間だし、コンスタントに気を張り続けるのは無理なこと。気の張る日数を少なくする必要もある」
春先はしっかり走り込んで、1年間戦える体力をつくる。その一方でACLなどの過密日程を考慮し、選手の心拍数を計測して疲労度を確認しながら練習の量を調整していた。さらに今年は、「疲れを感じたらすぐに言うように」と自己申告制にもした。それゆえ、長期の離脱者はほとんどいなかった。練習前後のフルーツ摂取や氷風呂の奨励などピッチ外のコントロールを含め、まさに「コンディション調整」の勝利と言っていい。