岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER

南アフリカW杯アジア3次予選 VS.バーレーン 

text by

木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2008/04/01 00:00

南アフリカW杯アジア3次予選 VS.バーレーン<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 これほどチャンスらしいチャンスを作れずに負けた日本代表を見たのは、いつ以来だろうか。3月26日のワールドカップ(W杯)アジア3次予選で、日本はバーレーンに敵地マナマで1−0で敗れた。

 W杯予選で最終ラウンドに行く前に土がついたのは、1990年イタリアW杯アジア1次予選を戦っていた、1989年6月の北朝鮮戦以来だという。19年ぶりに早い段階で黒星をつけられたという事実にも驚くが、攻撃の組み立てがほとんどできずに完敗という内容には、これまでの積み重ねはどこに行ってしまったのかと、考えさせられてしまった。

 試合前日にFW高原直泰が右足のケガで離脱する不運もあったが、全体に動きが重く、かつ少ない。プレスをかけてロングボールで攻めてきた相手に、日本は中盤で主導権が握れず、ロングボールを多用する攻めを繰り返して本来の攻めのリズムが取れなかった。

 巻誠一郎、大久保嘉人の2トップは相手のマークに競り勝てず、前線でボールが収まらず、両ウィングの駒野友一、安田理大もボールに絡むこともできない。

 欧州組のMF中村俊輔とMF稲本潤一を、それぞれ試合日程とケガのために招集できなかった上に、MF遠藤保仁をこの日の先発から外した布陣で、中盤で試合を組み立てる役割を担う選手がいなかったことが災いした。それは、後半10分に遠藤が交代投入されたあとのパフォーマンスを見れば良く分かる。ばらばらになっていた点が線でつながれたように、チームがまとまり、攻めの形が出てきた。

 それだけに、その時間帯でミスから失点してしまったことと、それまでの時間帯でチームとして攻めを形作れず、相手に主導権をわたしてしまっていたことは残念だ。皮肉とも言える展開だが、それまでのないないづくしの内容の悪さが、そういう流れを引き込んでしまったようにも見えた。

 選手一人ひとりは懸命にプレーしようとしていた。にもかかわらず、「今日は相手より走っていなかった」(遠藤)という状態になったのは、アウェーでのW杯予選に初めて臨んだ選手が少なくなかったチームの緊張感がそうさせたのか、それとも、直前まで1週間にわたって連日の気温が30度というドバイで一日2回の練習を続けてきていた反動がでたのか。大久保は、「パスを回して裏へ、ということを練習でずっとやってきたのに、今日は全然できなかった」と話した。

 この試合をどうプレーするのかというコンセプトは、しっかり描けていたのだろうか。試合後の選手のコメントを耳にすると、「ロングボールの方がつなぐよりリスクが少ない」とする選手がいる一方で、「長いボールを蹴れば相手の思うつぼ」と見ていた選手もいて、選手によって迷いがあったことが伺える。これでは、相手から主導権を奪うことも、自分たちのペースにもって行くこともむずかしい。

 岡田武史監督は試合後、「考えていた最悪のシナリオになってしまった。だが、これはアウェーの試合だし、今度ホームで勝てばいい。次の予選まで時間はある。十分やっていける」と話したが、その「次の予選」は6月の4連戦。しかも、オマーンとタイにアウェーで続けて対戦しなくてはならない。6月という酷暑が始まっている時期に、今回のバーレーン戦以上にそれは厳しい闘いになることは間違いない。

 1996年のアジアカップでサウジアラビアを率いていた時以来、初めて日本に勝ったミラン・マチャラ監督は、「我々にはいいスタートだ。オマーンは強い。彼らとマスカットで戦うのは大変なことだ」と話した。チェコ出身の同監督が06年ドイツ大会予選当時の古巣のことだけに、気になる発言だ。

 この日の結果で、日本は3次予選2組で2位に後退した。残り4戦を残して、過剰に悲観する必要はないだろう。だが、前任者イヴィチャ・オシム監督の下での積み重ねは姿を消し、この相手とアウェーでどう戦うのかというチームの形もあまり見えなかった。岡田監督は「メンバー選考を含めて考えて行きたい」と話したが、メンバーを変えることだけでなく、チームとしての戦い方を徹底させるようにできなければ、どの相手にも同じように苦労するだけだろう。6月までの時間を有効に使いたい。

岡田武史
駒野友一
安田理大
南アフリカW杯
ワールドカップ

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ