野球クロスロードBACK NUMBER
捕手起用で迷走する野村監督。
「優勝チームに名捕手あり」の苦悩。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byTomoki Momozono
posted2009/07/27 12:55
ピッチャーを生かすも殺すも捕手次第!?
そしてもうひとつは、7月21日の福岡ソフトバンク戦。ルーキー投手の井坂亮平を中谷がもたせきれなかった。0対3とリードを許した3回、松中信彦に対してカウント2-2からの6球目、内角低めへ絶妙に決まるフォークはライトポールへギリギリきれるファウルだったが、コースは見事だった。だが、次に外角へ要求したストレートが逆球となり本塁打を浴びた。
野村監督は「バックが盛り上げてやらないといけないピッチャーなのに、足を引っ張っちゃダメだろ」と苦言を呈した。これは、内野手の細かいプレーも含めてのボヤキだが、結局、リズムを掴み損ねた井坂と中谷は共にこの回でベンチに退くこととなる。中谷にしてもルーキーを気持ちよく投げさせるために、内角低めのフォークを続けるなどしてより投手心理を読んだリードをするべきではなかったか。
念願のプレーオフ進出を目指し、正捕手の座を競わせる。
「キャッチャーってのは、指1本のサインでも『あそこでもう1回、リードをやり直せれば……』と試合が終わった後に必ず思うもんなんですよ。特に負け試合では、その思いは強い」
野村監督は、試合という絶好の教材で得た教訓を忘れるべからず、と言う。
一人前のキャッチャーになるには、最低でも3、4年はかかると言われている。嶋は3年目。中谷は30歳ながら一軍での実績は嶋には劣るが、阪神の矢野輝弘は30以降に野村の教えを受け名捕手となったことから、まだ諦めるには早い。
指1本から始まる、「優勝チームに名捕手あり」。
さすがに優勝は厳しいが、念願のプレーオフ進出を目指し、東北楽天は本格的に正捕手作りに着手した。そう思えば、7月の妙な捕手起用も頷けるような気がする。