野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
113人中101人が最下位を予想……。
横浜ベイの開幕戦を観に行った!!
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/04/13 12:00
震災被害地でもある八戸大出身の内藤雄太が9回1死一、三塁からサヨナラ安打。「みんなが駆け寄ってきて、ああ勝ったと。いろんな思いが湧いてきた。ヒットなら汚いヒットでも構わないです」
試合が始まると……気合いのこもったプレー連発!!
だが、ゲームがはじまって驚いた。選手たちの動きが明らかに昨年までとは違っていた。
村田のタイムリー、吉村裕基の4安打に、江尻慎太郎、加賀繁の完璧なリリーフ。結果に直結するそれらのプレーも確かに素晴らしかったが、それ以上に今季の横浜の変化を肌で感じ取れる気持ちのこもったプレーが試合のあちこちで見られたのだ。
移籍初ヒットで出塁した森本稀哲がベース上で米村理コーチに無邪気に抱きつくシーンは昨年までには絶対になかった光景。渡辺直人も満塁のチャンスで内野ゴロにも一塁に頭から突っ込んで、チームに勢いを与えるなど攻守にわたって存在感を見せた。
四球を連発し、ランナーを残してマウンドを降りた大沼幸二は、その後バトンを受けた佐藤祥万が三振を獲ると、ベンチを飛び出して我が事のように喜んだ。石川雄洋は塁上でプレッシャーをかけ続け、武山真吾はランナーを進めようと徹底して右打ちする。外国人のハーパーもフェンスに突っ込んでボールを取りに行った。
村田がついにチームリーダーとして覚醒した!?
そして、何より今季キャプテンを襲名した村田である。マウンドの投手に、キャッチャーの武山に声をかける姿、肉離れで足が万全でなかったとはいえ、今まで散々「走らない」と野次られ続けていたあの村田が、凡打でも全力疾走で一塁まで駆け抜ける。シングルの当たりで二塁を陥れ、フライ二本で同点のホームを踏む。それは、スタンドのファンが文句を垂れながらも、ずっとずっと待ち望んでいたチームの大黒柱としての姿にほかならない。
ところどころ、昨年までのベイスターズの姿も見えるのである。だが、最後まで気持ちが切れなかった。粘って粘って、最終回、代打の内藤雄太が浅尾拓也から執念のサヨナラヒットを放ち涙に暮れると、スタンドの何人かは、こんな試合ができるベイスターズに、もらい泣きをしていた。
代打内藤によるサヨナラヒットで8年ぶりの開幕戦勝利。
ヒーローになった内藤は試合後、こんなコメントを残している。
「僕はキャンプの最初は二軍だったんですけど、今日、この雰囲気を見てすごいな、と思いました。僕はずっとベンチにいたけど、初回から監督、コーチ、もちろん選手一人ひとりが自然と声を出す雰囲気なんです」
昨年「ベンチに誰もいない」と笑われたチームが、ここまで変った力は何なのか。
球団が、選手が崖っぷちに追い込まれたからか、東北の震災が、野球をやることの意義が、選手を変えたのか。それはまだわからないが、たった一試合だけでも、確実に「ベイスターズは変わろうと努力している」といえるだけの痕跡を見た気がする。
戦力は乏しいのかもしれない。野球を観るプロの9割が最下位と判断したという現実は間違いなくある。今シーズンもこの先、多分、かなりの数も負けるだろう。だが、この姿勢を目の前で見せつけられたばかりの今なら言える。
今年は横浜が優勝する……気がする。