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次世代のマラソン女王となれるか?
横浜国際女子で優勝した尾崎好美。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2011/03/03 10:30
残り3kmでかけた勝負で見事に勝利を手にした尾崎好美。世界選手権代表の内定第1号となった
ペースメーカーを投入した横浜国際女子では好タイムが!
だが、オリンピックのような厳しい勝負の場では、レースの駆け引きはむろんのこと、一定以上の記録を出せるスピードも持ち合わせなければならない。こうした状況に、来年のロンドン五輪を前に、危機感が高まっていた。
それを打開するために、日本陸上競技連盟は、ひとつの対策を採った。ペースメーカーの導入である。実は2000年代の半ば頃まで、海外からペースメーカー役の選手を呼ぶこともあったが、役割をうまく果たせないなどの理由で、以後、とりやめていた。今シーズン、久しぶりに、大阪国際女子、横浜国際女子と、日本の選手をペースメーカーとして走らせ、ペースアップを図ったのである。
悪条件だった大阪はともかく、今回の横浜は、序盤からハイペースで進んだ。結果、このところの大会では好記録と言えるタイムが出た。ペースメーカーの効果だと言える。
余談だが、27日の東京マラソンの女子では、初マラソンの樋口紀子が2時間28分49秒で2位に入る好走を見せたが、樋口は大阪でペースメーカーを務めている。「(ペースメーカーで)マラソンの緊張感や雰囲気を味わえました」とコメントしている。ある意味、ペースメーカー導入の効果かもしれない。
尾崎、中里ら「日本の軸」候補は女子マラソンを救えるか?
もちろん、2005年以前のレベルからすれば、まだまだかもしれない。また、オリンピックにはペースメーカーはいないから、自分自身でペースをきっちり作れるようにならなければならない。
そうではあっても、尾崎にとって、優勝争いの本命と目される中、自己記録に迫るタイムを体感できたことは、指導する山下佐知子監督が「自信になったんじゃないですか」と語っているように、十分手ごたえとなる。「100点です」とレースを振り返った2位の中里にとっても同様だろう。
今夏の世界選手権代表入りも確実となった尾崎が、日本の軸として成長できるか。より速い記録を求め、他の選手が続いていけるか。
課題は多いが、まずは復活への足がかりとなったのが、今回の横浜国際女子マラソンであった。