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東大・京大30人、国公立大医学部にも20人超の合格者…富山の超進学校がスポ薦なしで“県大会31連覇中”王者を倒して「全国高校駅伝出場」までのウラ話
text by

山崎ダイDai Yamazaki
photograph by富山中部高校提供
posted2025/02/22 11:00
2023年、富山商業の県駅伝32連覇を阻止し全国高校駅伝へ初出場を決めた富山中部高の女子駅伝チーム。その裏には超進学校ならではの苦労もあった
スポーツ推薦の制度もない公立校が、県下に轟く「最強王者」を倒して全国の舞台を狙えるかもしれない。そんなチャンスが巡ってきたのだ。スポ根漫画の世界なら、選手も指導者もここぞとばかりに燃えそうなシチュエーションである。
だが、現実はそう単純なものではなかった。
この時、水原の頭にあったのは「どうしたもんかなあ」という、ある種の戸惑いだったという。その理由の一端は、富山中部が「普通の」公立校とはいえない存在だったからだ。
富山中部高は…全国でも有数の「超進学校」
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東京大学25人、京都大学5人、大阪大学15人、国公立大の医学部に24人、早大40人、慶大32人(※いずれも2023年度の実績)……挙げればきりがないほどに、難関大の合格者が続く。そう、同校は全国でも屈指の超進学校なのだ。
特に地方の公立校という条件を踏まえれば、その進学実績は破格ともいえた。そしていわゆる進学校の例にもれず、ほぼすべての運動部員は高3の夏のインターハイ路線で部活を引退するのが通例となっていた。
しかも地方の高校らしく、国公立大の受験者が圧倒的に多かった。当然、ほぼ全員が1月の大学入学共通テストを受験する。仮に年末の都大路を走ろうものなら、ある意味で人生のかかった大一番のわずか3週間前ということになる。無論、多かれ少なかれ、試験への影響もでることになる。
この時インターハイ出場を決めた3年生の佐伯も、国公立大の医学部を志望していた。
佐伯は中距離だけでなく比較的長い距離にも適性があり、チームのエース格の選手でもあった。ただ、普通にいけばここで引退である。
絶対王者の牙城を崩せる可能性が出てきてしまった。ただ、そもそも現実的にベストメンバーで挑めるかはわからない。
「佐伯、部活続けるんかな……」
そんなことを思いながら、水原は予想外の難題を背負った気分だった。
<次回へつづく>


