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「小野伸二がまとめた個性派集団」黄金世代は日本サッカー界に何を残したのか? 中田浩二に聞く“本当の功績”「日本代表の進化に少しでも…」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNumber Web
posted2024/02/01 11:05
小野伸二をはじめ、黄金世代の多くの選手が現役生活に別れを告げた。その一員である中田浩二が語る「功績」と「心残り」とは
――黄金世代が黄金世代たる所以は、「負けず嫌い」によってお互いを高め合ったことにあると思うのですが、同時に仲間としての絆も特別なものがあるんだと感じます。
「嫉妬や羨望交じりの『負けたくない』ではないんでしょうね。認めているけれど、負けるわけにはいかない。こじれたものじゃなくて、本当に純粋に負けたくない。伸二がああいう性格で、チームをうまくまとめてくれたのも大きい。伸二という目指すべきシンボルがあり、そこへ向かって競争する。同時にチームを強くしたいしサッカーを楽しみたいという、向かうべきベクトルが一致していたからこそ、いい競争が生まれたんだと思います」
◆◆◆
小野伸二が語った「黄金世代への思い」
引退試合のあと、中村俊輔にその日競演したライバルについて訊いた。
「子どものころから小野伸二がそうだったし、代表に入ったらヒデさんもいました。競う相手がいることで僕自身が成長できたと思っています。彼らとは違う自分の強みを見つけよう、磨こうとしました。そのひとつがフリーキックになったと思います」
小野伸二にライバルについて訊いたのは、彼の著書『GIFTED』(幻冬舎)の発売イベントだ。
「同級生はもちろん、全員、ライバルだと思っていましたよ。俊輔くんはひとつ上ですけど。だからといって俊輔くんに勝っていると思ったことはないですし、人それぞれのよさがあると思っています。僕には僕のよさがあるし、仲間には仲間のよさがあったから」
そして、小野も黄金世代について語ってくれた。彼の言葉は、中田浩二のそれと不思議なほど重なり合っていた。
「僕らはお互いに一人ひとりをリスペクトして、一人ひとりがすごいということを理解し、切磋琢磨して、競い合って、みんなが上へ行くんだと思い続けていました。『もっともっと巧くなりたい』『いいものを見せたい』『見ている人をワクワクさせたい』という思いを持った選手の集まりだった。僕らの姿を見た子どもたちが、少しでも『こういうふうになりたい』『もっと上へ行きたい』と思うきっかけになれていればうれしいですね」
小野は自身のキャリアについて「僕はほとんど記録らしい記録を残していない」と語った。けれど、小野が多くの人の「記憶」に残っていることを疑う者はいないだろう。黄金世代も同様だ。選手それぞれがライバルと競い合うことで、自分を磨いた。いつしかそれが個性となり、武器になっていった。
そうした過程が日本サッカーの歴史となり、現在に繋がっている。
<#1「小野伸二との出会い」、#2「2006年W杯の真実」から続く>