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「小野伸二がまとめた個性派集団」黄金世代は日本サッカー界に何を残したのか? 中田浩二に聞く“本当の功績”「日本代表の進化に少しでも…」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNumber Web
posted2024/02/01 11:05
小野伸二をはじめ、黄金世代の多くの選手が現役生活に別れを告げた。その一員である中田浩二が語る「功績」と「心残り」とは
「海外では自分で考えて動かないと、生活自体もできない面があるので。あと、育成年代の環境をとっても、日本ならジュニアユース、ユース、あるいは中学、高校とチームに入れば3年間はプレーできるのが普通だけど、ヨーロッパや南米では1年ごとにセレクションがあって、首を切られる可能性がある。だから、生き残るために何をしなくちゃいけないのかを常に考えていないといけない。そういった環境の違いは大きいと思います」
中田浩二が考える「ベスト8の壁」
――とはいえ、日本サッカーは着実に進歩を遂げています。2022年のカタールワールドカップでは、真剣勝負でドイツとスペインに勝利しました。
「純粋にすごいなと思いましたよ。本気の強豪国にワールドカップで勝てるんだ、と……。内容は別にして、押されても耐えられる力、そこから跳ね返す力がある。日本サッカーの成長を感じましたね」
――その理由を挙げるとすれば。
「やっぱりヨーロッパでプレーする選手ばかりで、みんな自信を持ってプレーしている。経験値が僕らのころとは全然違う。僕たちはまだ世界を知らなかったから。相手に対しても『どんなプレーなのか』というところから手探りで、上を見上げるような感じだった。でも、今の選手はヨーロッパの環境のなかで、世界のサッカーを知っている選手がたくさんいる。海外が日常だから。日々体感した相手の圧力、強さや速さを伝えられる選手も多い。これは本当に強みだし、僕らのときとは全然違う。その違いは大きいですよ。日本代表が強くなるのも当然です。だけど、ベスト8の壁が越えられない。あと一歩のところには来ていますし、ベースはできていると思うから。あとはいかにそれを勝負強さに変えていくのかというところですね」
――2002年の日韓ワールドカップをきっかけにサッカーを始めた子ども、あるいは子どもにサッカーさせるようになった親も増えたと思います。そういった世代が、現在の日本代表を支えている。
「あの大会の熱量というのは、『日本でもこんなにサッカーが愛されるのか』と僕ら選手も痛感しました。ほぼ同時期に、『もっと上へ行きたい』とヨーロッパへ出る選手も増えた。伸二がUEFAカップで優勝し、イナ(稲本潤一)がアーセナルへ、タカ(高原直泰)はドイツへ行った。上の世代のヒデさん(中田英寿)や(中村)俊輔も活躍して、ヨーロッパでの日本人の可能性を示せたと思います。それが今に繋がっていると感じますし、今の日本代表の進化に少しでも関われたのかなという気持ちはあります。もちろん僕らがすべてをやったわけじゃないですけど(笑)」