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小野伸二は“孤独な天才”だった?「シンジは本当の才能を気づいてもらえず…」「メッシ、マラドーナの境地に近い」風間八宏が語る核心

posted2023/09/30 11:03

 
小野伸二は“孤独な天才”だった?「シンジは本当の才能を気づいてもらえず…」「メッシ、マラドーナの境地に近い」風間八宏が語る核心<Number Web> photograph by Raita Yamamoto

日本サッカー史に残る天才MF小野伸二。引退しても珠玉の技術の記憶は永遠に色褪せることはない

text by

茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph by

Raita Yamamoto

プロは巧い。巧いからプロになれる。でもその中で小野伸二が特別なのはなぜなのか。技術論を突き詰めた指導者が読み解く、世界に通じる究極のテクニックの秘密――。稀代の天才MF小野伸二が引退を発表しました。その実績に敬意を表し、Number1068号(2023年2月16日発売)掲載『[智将の視点]風間八宏が語る 技術の核心』から特別に全文掲載します(経歴・肩書は掲載当時のもの)。

 サッカーでは「ボールは友達」「ボールを動かせ。ボールは疲れない」などといった有名なフレーズがある。これらの言葉には〈ボールが主役〉という考え方がベースにある。しかし小野伸二の場合は、やっぱり〈プレーヤーこそが主役〉と言えるのかもしれない。

 技術論を聞くなら、適任者はやはり風間八宏さんである。川崎フロンターレなどで相手の守備網を破壊する攻撃を作り上げ、現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めている。個人技術を解説する名手でもあり〈小野の巧さ〉について明快に解析してくれるはず。

 風間さん、小野の凄みについて教えてくれませんか? そう聞くと、こんな答えが返ってきた。

「伸二の足は、完全にボールの性質を覚えちゃっている。どうなるとボールが止まるか、どうボールが飛んでいくか……あそこまでボールの性格を足で知っている選手はいないんだ」

俺が見た中・高校生ではダントツだなと感じたよ

 そんな風間さんが初めて天才MFのプレーを直に見たのは、小野が清水商業に在籍していた頃。風間さんにとっての母校でもある清商を率いる名将・大瀧雅良からこんな風に切り出されたという。

「こんな巧い選手、見たことないだろう」

 実際、小野のプレーには一瞬で分かるクオリティの高さがあった。

「俺が見た中・高校生ではダントツだなと感じたよ」

 懐かしそうに語る風間さんの指導の土台には「止める蹴る」というサッカーに不可欠な動作の追求がある。その「止める蹴る」の観点から深掘りしてみる。

 小野と言えば、ボールと足が磁石のN極とS極のようにピタッと吸いつくトラップを見せるが……風間さんは「止める」の原則として〈ボールと足の「点と点」を合わせることで、ボールを完全に静止させる〉と、自身の書籍などで説明している。

 トラップと言えば「インサイドで止める」「ボールが当たる瞬間に足を引く」などと語られがち。だが、ボールを止める位置を点でイメージするのが風間流である。人によって場所は違うが、例えば「ボールの中心からやや上の決まったポイントを、足の親指の付け根付近で触る」といった感じ。小野はそのツボを確実に押さえているのだ。

「止める蹴る」、そして「見る」

 さらに「蹴る」についても、インサイド、インステップ、インフロントキックなどキックの種類は様々あれど、風間さんはフォームと立ち位置はすべて同じで〈ボールの中心を自分の中で知って、捉えることが一番大事〉と説明している。

【次ページ】 記者に「意味が分かんない」と言われたアシスト

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