- #1
- #2
マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「トータルでは楽天・則本の大学時代より上」大学ジャパン候補合宿で見つけた“愛知の逸材”の正体…「足りないのは全国大会での実績だけ」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byYoshiyuki Ohtomo
posted2023/12/10 17:01
MAX157kmの豪速球で関係者のド肝を抜いた愛知工業大・中村優斗(176cm80kg・右投左打・諫早農業高)
合計26選手が参加した野手陣の中で、私の目にドーンと飛び込んできたのが、中部大・清水智裕捕手(180cm92kg・右投右打・大垣日大高)のプレーだ。
合宿第1日(12月1日)がとても寒かった。グラウンドにカメラを向けていると、手がしびれてくるほどの冷たい強風の中、バッティング練習でなかなか強いインパクトが出来ない選手が多いにもかかわらず、清水選手の「オレのスイングを見てくれ!」と言わんばかりの渾身の力を込めたスイングが、まずこの目に飛び込んできた。
「代表候補選手選考合宿」――つまり、オーディションである。腕利きぞろいの中で、さらに目立とうとする意欲こそ、代表選手にふさわしいバイタリティであり、生命力だ。目立ってなんぼのオーディションで、そこのところの意欲が伝わってこない選手も、正直いるのがじれったい。
「そうですか、そういうふうに見えたんだったら嬉しいですね。ウチに入って来た頃は、内気なヤツでしたから」
中部大・堀田崇夫監督、ちょっとホッとした様子。ご自身と同じ「捕手」だけに手塩にかけてきた教え子だ。
紅白戦で響いた「規格外の打球音」
合宿2日目の紅白戦。
清水選手が放った右中間フェンス近くへの二塁打。その打球音が凄かった。「ガチャキーン!」と聞こえたような、木製バットでは聞いたことのない衝撃的なインパクト音。
この日、3試合行われた紅白戦で、インパクト音で驚いたのはこの清水選手の右中間二塁打と、創価大の2年生・立石正広三塁手(180cm86kg・右投右打・高川学園高)のセンターオーバーの二塁打。たった2回だけだった。
「1年生の頃からボールの弾き方が違ったっていうのか、打球の飛び方が違ったんですよ。打球のスピード、飛距離……あっという間にフェンス直撃とか、打った瞬間フェンス越えとか。同じライナー、同じ放物線でもこっちが圧倒されるような打球がガンガン飛んでましたね」(堀田監督)
この秋は、あちこち痛い所があって、リーグ戦は不本意な内容に終わったそうだが、痛みが癒えてからは本来の「豪打」が戻ったという。