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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「トータルでは楽天・則本の大学時代より上」大学ジャパン候補合宿で見つけた“愛知の逸材”の正体…「足りないのは全国大会での実績だけ」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byYoshiyuki Ohtomo
posted2023/12/10 17:01
MAX157kmの豪速球で関係者のド肝を抜いた愛知工業大・中村優斗(176cm80kg・右投左打・諫早農業高)
次元が違うのは、快速球だけじゃないという。
「大谷翔平投手が投げるっていう<スイーパー>ですか。あれ、投げるんですよ。ホームベースの端から端まで、真横に曲がっていくようなボールで、曲がり始めが遅いから、あれがキレてる日は、もうお手上げ。フォークもありますしね。私、則本君(昂大・三重中京大→楽天)の大学時代も見てますけど、トータルなら上じゃないですか、中村君のほうが。彼にないのは、全国の大舞台での経験だけですね」
野手では“明治大のプリンス”に注目が
野手で、ネット裏の注目が集まったのは、前評判通り明治大・宗山塁遊撃手(175cm78kg・右投左打・広陵高)だ。
シートノックでも、紅白戦の守りでも、まずエラーをしない。今年は春から、練習、実戦と、何かと宗山選手のプレーを見る機会が多かったが、いつもそうだ。いつもなっかなかエラーをしない。そこが凄い。
宗山遊撃手のフィールディングを見て思うのは、打球(特にゴロ)の軌道まで「足」を運べていることだ。打球のすぐ近くまで足を持っていけるので、ハンドリングに余裕がある。つまり、腕の動きが少ない。最後は腕を伸ばしてグラブで打球をつかみにいく内野手は、腕が伸びているぶんイレギュラーに反応できない。宗山遊撃手にはそれがない。
そして捕ればアウトのスローイング精度。それも、やはり捕球姿勢に余裕があるからだ。体勢の崩れた難しい捕球の場合でも、ほぼオール・ストライクの送球ができるのは、強肩や指先感覚だけが理由じゃない。内野手の打球処理の「王道」を見せてもらっている思いだ。
一方で、バッティングはどうか。実戦の中でも非常に高いジャストミート能力を発揮するが、ミートした後の力強さが物足りなく見える。
学生野球では、ジャストミートだけでもある程度の打率はマークできるのかもしれないが、劣勢の展開でも150キロ台を投げる投手が登板してくるプロ野球で、今のバッティングスタイルでどうなのか。
余計なお世話かもしれないが、来季は宗山選手がなりふり構わずバットを強烈に振りきって、なんなら「バックスクリーン越えでも狙おうか!」みたいなスイングを、空振りでもいいから見てみたいものだ。