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年俸270万円が今や“20億超え”…メッツ千賀滉大の逆転人生「なぜ無名の高校生がスカウトされた?」山本由伸と比較する“どちらが最強か” 

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太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

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posted2023/11/14 06:00

年俸270万円が今や“20億超え”…メッツ千賀滉大の逆転人生「なぜ無名の高校生がスカウトされた?」山本由伸と比較する“どちらが最強か”<Number Web> photograph by Getty Images

驚きの大出世を果たした千賀滉大(メッツ)

チャンピオン山本由伸と「ベストシーズン」比較

 そんな千賀は、果たして「日本プロ野球史上No.1投手」といえるのか。生涯ベストシーズンの成績を比較して決める当企画。現チャンピオン山本由伸(オリックス)との対決である。

 千賀の日本プロ野球におけるベストシーズンは、投手三冠を達成した20年だが、残念ながらこの年はコロナによる短縮シーズンのため、山本と公平な比較が難しい。そこで、シーズン奪三振率の日本記録を達成した19年を千賀のベストシーズンとする。この年の成績を、山本のベストシーズンである21年の成績と比較してみよう(赤字はリーグ最高、太字は生涯自己最高)。

【2019年の千賀】登板26、完投2、完封2、勝敗13-8、勝率.619、投球回180.1、被安打134、奪三振227、与四球75、防御率2.79、WHIP1.16

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【2021年の山本】登板26、完投6、完封4、勝敗18-5、勝率.783、投球回193.2、被安打124、奪三振206、与四球40、防御率1.39、WHIP0.85

 千賀は奪三振で勝るも、勝利数、勝率、投球回、防御率、WHIP、完投数、完封数と、ほとんどの項目で山本が上回っている。

 つぎに、当企画で重視する打者圧倒度――1試合あたりの被安打数、9イニングあたりの奪三振数、防御率、WHIP――を見てみよう。1試合当たりの被安打数は、山本5.76に対して千賀が6.69と山本がリード。1試合当たりの奪三振数は、山本の9.57に対して千賀11.33(日本記録)と、これは千賀が圧勝。

 防御率は、山本1.39に対して千賀2.79と山本が圧勝。WHIPも山本が0.85、千賀が1.16と山本勝利。防御率、WHIPについては、1試合当たりの与四球数で山本の1.86個に対して、千賀は3.74個と大差がついている。成績比較からは、制球力でも山本が勝っていると言えるだろう。

 以上の結果、奪三振以外の項目すべてで上回る山本の勝利とする。さすがはNPB史上初の3年連続投手4冠、3年連続沢村賞投手である。

 千賀は好成績を挙げた19年、20年と2年連続でパ・リーグの与四球王になっている。その点、細かいコントロールより球威で打者を圧倒して三振をとるという野茂英雄タイプのパワー投手と言えるだろう。

 裏を返せば、千賀にとって制球力の向上は、今後のさらなる伸びしろと言えるのではないか。

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