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西武・山川穂高の”強制わいせつ致傷疑惑”にNPBはどう対応すべき? 類似の事件でバウアーに重い処分を下したMLBとの”決定的な違い”とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2023/05/18 17:01
5月11日に強制わいせつ致傷疑惑が報道された山川穂高。翌12日に西武は山川の一軍選手登録を抹消した
山川のケースでのNPBの対応は?
今回の山川のケースでは西武球団が問題に対応し、現時点でNPBが事件の調査に乗り出す様子は微塵もない。もちろん警察が捜査中という段階ではあるが、機構(コミッショナー)として山川本人の話を聞くなど独自で動く権限はあるが、その気配もない。おそらく今後は起訴になるか、不起訴で終わるか、事件に一定の目処が立った時点で西武球団が処分を科すかどうか、また処分をするとすればどの程度のペナルティーを科すのかを決めて、それをNPBに報告することになるだろう。もちろん事前の擦り合わせはあるが、処分がどういうものであろうと、NPBがそれを追認するというのが過去の例から推察できる結末となる。
要は所属球団という“身内”が調査し、“身内”が処分を決めることになる。統括組織のNPBが独自で動くことはない。
一方、MLBは当該球団とは別に機構がしっかり動いて、こうした事件に対して必要と判断すれば厳しい処分を科す。
特に近年は差別やハラスメントが社会的にも大きな問題となっている。そのことにMLBもビビッドに反応。バウアーの事件だけでなく選手による家庭内暴力などにも出場停止処分など厳しく対応している。また選手だけでなく、球界関係者による女性への不適切な行為が相次いだことを受けて、2021年にはハラスメントや差別に対する行動規範を改定。そうした問題にMLBではゼロ・トレランス方式を採用して、軽微な違反であっても厳しく対応するという方針を打ち出しているので、違反した場合には警告、職務停止、解雇などの措置が取られることも明記するようになっている。
「ハラスメント委員会」を作ることが急務
もちろん男女間の問題にどこまで機構が口出しをできるのかということはあるだろう。ただハラスメント被害に遭うのは、より立場の弱い女性であったり、組織内でポジション的に低位にある人々である。そうした人々の救済に組織として取り組むことは、もはや一般社会では当たり前の責務と言える。そう考えると今回の山川の事件を契機に、機構や球団の職員だけでなく、選手の私生活なども含めてハラスメント被害を訴えられる「ハラスメント委員会」を作ることが急務だと言えるだろう。